王特別顧問を金屏風の前に座らせ、楽天野村監督が大老。老中に加藤コミッショナーを配し、星野氏を屏風の裏に控えさせていれば、“御前会議”は一件落着すると高をくくっていたのか。プロ野球OBが解説する。
「まぁ、その見立ては正しいな。王さんがこうすると言えば、選手は日本人大リーガーを含めて従わざるを得ないと思っていたのは間違いない。それが、イチローの物言いで、1からとは言わないまでも練り直しを迫られることになった。日本が本気で2連覇を狙うなら、現役監督が指揮を執るのは当たり前のこと。イチローの言うことは、あまりに正論だから、耳を傾けるしかなくなったんだよ」
すべては、体制検討会議が選手の意向を無視したことに起因しはしないか。スポーツ紙デスクが証言する。
「北京五輪の日本代表のコーチと選手選考のあたりから星野氏への不満の声は、すでにあった。金とは言わないまでも、銅を取ればすんなり“リベンジ体制”は認められたでしょう。それが、あのていたらく。球界はもちろん、ファンから『星野ノー』の声が上がり、それらすべてがイチローの耳に届く。そして、決定打が野村監督のリーク。条件が整ったところで、イチローの発言につながったわけです」
27日の検討会議でWBC監督が決定するのは、もはや既定の事実。1週間の猶予もない。イチローの怒りを含んだ提案に王監督はどんな答えを用意しているのか。
一部では、イチローの兼任監督案も出てきている。
「それだけは、絶対にない。第1回大会のときがそうだったように、選手間でのリーダーシップを発揮する覚悟はできているだろうが、役割はそこまでとイチローは心得ている」
岩村や松坂、黒田の両投手らのメジャーリーガーだけではなく、日本球界から参加する選手も、尊敬するイチローのアドバイスには従う。
先日、引退した清原は親分肌の人間性が、イチローはその世界基準のプレーが選手を引きつけるのだ。
それでは、WBC体制検討会議は週明けの27日、誰を監督に指名するのか。前出のスポーツ紙デスクが推理する。
「ケチのついた星野氏も、ケチをつけた野村監督も、もう指名はできない。現役監督を前提にすれば、セ、パのクライマックスシリーズに進出している4チームの監督が候補になる。そのうち、中日落合監督は早くに打診されて断っているから除外していい。残る3監督、巨人原、西武渡辺、日ハム梨田から、選ばれるのはまず間違いない。ここまで、選考がのびたんですから、日本シリーズで戦う2監督のどちらかに落ち着くんじゃないかな」
調和、バランスを旨とするのが日本人。落ち着く先が見えてきた。