「私は元々、人と関わることが苦手でアルバイトの面接すら落ち続けていたんです。少しでも今までの自分を変えたいと思って受けたのがキャバクラの面接でした」
そこで出会ったのが、のちに優香と付き合うことになる店長Aである。店長は夜の世界で働くことに不安を抱く優香を優しく励まし、採用してからもサポートし続けた。接客がうまくいかず落ち込んでいる時はドライブに連れていったり、プライベートの悩みであっても親身に聞く。そんな日々が続くことで優香は店長Aに惹かれていった。
「店長Aからは“店のスタッフや女の子にバレたらよくない”と言われていたので距離が縮まった後も2人の関係は必死に隠してました」
だが幸せな日々は長く続かない。店長Aと深い関係になってから数か月後、副店長に呼び出された優香は想像もしていなかった事実を聞かされる。
「店長Aは、ほかの女の子にも手を出していたんです。それがグループの幹部に知れ渡り、問題になったみたいで」
そこから副店長による個人面談が行われた。優香が副店長から聞かされた話によると、ほかにも店長Aと付き合っていると証言した嬢が何人かいたという。深い関係にあったのは優香だけではなかったのだ。キャバクラの店長が嬢と親密な関係になる理由としてよく挙げられるのが、個人的な感情とは別に、仲良くなることで他店への引き抜きを防ぐためであるという。しかし今回ばかりは風紀に関わる事態ということで、幹部は黙っていなかったようだ。
「仕事上、たくさんの女の子の癖や性格を知り尽くしてた店長Aにとって新人キャバ嬢の扱いは御手の物だったんでしょうね。もう職場恋愛はコリゴリです」
真剣に店長Aへの思いを抱いていた優香はショックのあまりそのまま店を辞めた。現在は男性社員の少ないコールセンターで働いている。
(文・佐々木栄蔵)