成長の証しが随所に見える。前駆にも後駆にも筋肉の目いっぱい詰まった褐色の馬体。そのシルエットがひとたび動きを速めると、男馬も縮み上がる圧倒的な迫力をかもし出す。
アストンマーチャンが文句なしの仕上がりだ。「これ以上ないぐらいびっしり乗り込んできた。いうことない」と上田助手はうなずいた。大人になったのは肉体だけではない。春は馬場入りを拒否したり、わがままな一面をのぞかせていたが「この秋は違う。中間は坂路を2本乗っているぐらいだから。落ち着きが全然違うんだ」と続けた。
実質の本追い切りとなった20日の1週前追い。新コンビを組む中舘が美浦から駆けつけ、鞍上も納得の走りを披露した。坂路で800mを51秒0→12秒2。鋭く、しかも人のいうことを素直に体現できる。しまい重点のいい調教だった。
前走の北九州記念は1番人気に支持されながら6着。物足りない結果だったが、力関係以前のはっきりした敗因があったという。
引っ掛かり気味に先行しながら馬場の悪い内へ押し込められた。しかも先行馬が総崩れの展開。「そのなかで残ったのはこの馬だけでしょう。休み明けで古馬相手と厳しい条件だったのに、よく辛抱した。悲観する内容ではない」
担当の上田助手は00年のスプリンターズSを制したダイタクヤマトも手がけていた。「あの馬と違ってマーチャンは状態の良さが結果に直結する」と巻き返しに手応えをつかんでいる。
ダービー馬ウォッカを代表に今年の3歳牝馬は歴史的ハイレベル。マーチャンは阪神JF(2着)でそのウォッカとクビ差の接戦を演じた。スピードを思う存分発揮できる6Fで、強力外国馬のいない今年なら…。
「前回は負けたけど、1200mを使うワクワク感は何も変わらない」ウォッカに続き、マーチャンも歴史に彩りを添える。
【最終追いVTR】 坂路で単走。馬任せで中間地点から徐々にピッチを上げていった。最後はこの馬らしい回転のきいたフットワークで軽快にフィニッシュ。もともと攻め駆けするタイプだが、2週連続で51秒台の好時計をマーク。体調がいい証拠だ。