「私と同世代のかたは、昔のプロレスや野球、サッカー、すべて実名のスポーツ選手が出ていたアニメやコミックの記憶があると思いますが、いまはもはやそういうことができない時代になってます。ただ、新日本プロレスは違います! そのアニメの中で選手が次々、実名で登場します」
場内のビジョンにはタイガーマスクと対峙する“アニメ版”オカダ・カズチカの姿が映し出されていた。アニメ版の『タイガーマスク』は、1969年から71年まで、日本プロレスが全面協力のもと、よみうりテレビ・日本テレビ系列にて放送され、大ヒットした。アニメの中ではジャイアント馬場がグレート・ゼブラに変身している。そして、81年から82年までは新日本プロレスが全面協力のもと、『タイガーマスクII世』をテレビ朝日系列で放送。アントニオ猪木、山本小鉄からスタン・ハンセン、アンドレ・ザ・ジャイアントなど当時の常連外国人選手も実名で登場した。これに伴いデビューしたのが、初代タイガーマスク(佐山聡)である。このメディアミックスは大成功し、昭和の新日本プロレス黄金期を支えた。歴代の“プロレスラー”タイガーマスクのコスチュームは『II世』のデザインがベースになっている。
「このアニメは世界にくまなくネット配信や番組販売で広がり、世界中から引き合いがあるはずです。そのことによって、タイガーマスクというコンテンツと、新日本の選手が世界中に広まるんじゃないかと考えています。ブシロードという会社は、どちらかというと二次元中心で活動していますが、今はやはり二次元から三次元に入るという男性、女性が非常に増えています。このアニメを放送することで、アニメから入って新日本のファンになる人もいるんじゃないかと思います」
木谷オーナーは、3度目となるアニメ版『タイガーマスク』を新日本世界戦略用のコンテンツのひとつとして捉えている。日本のアニメ文化は、クールジャパンとして世界でも認められており、親会社のブシロードとしても得意なジャンル。現在、新日本は台湾で興行を行っているが、今年は香港やシンガポールでの開催も視野に入れており、アジアツアーに向けても強力なコンテンツになる可能性を秘めている。
「真壁(刀義)さんなんか自分でできるんじゃないですかね」と語った木谷オーナー。選手自らが声優を担当することに関しては、スケジュール等との兼ね合いもあるが、声優向きの選手に関しては可能性が残されているようだ。
「(提供スポンサーは)新日本とブシロードになるかもしれませんが、まだ決まってないです。そこはおもちゃや音楽、いろんな業界に広がってほしいなと思います。(放送開始時期については)編成の話なので言えないですが、そんなに遠くないはず」
最後に放送局などに関する具体的な質問が飛んだものの、木谷オーナーは調整中の部分に関しては明言を避け、「内容は今風になっていて面白い。女性ファンが増えるのではないか」と語った。ブシロードはかつてTOKYO-MXで再放送された『タイガーマスク』の1社提供スポンサーになった実績もある。『タイガーマスク』と『タイガーマスクII世』、アニメ版タイガーマスクはいずれもプロレスファンを爆発的に増やしてきただけに、今回も1人でも多くの目に触れる環境下での放送に期待したい。どのような形でプロレス界に還元されるのか、派生するさまざまな展開も含めて非常に楽しみである。
(増田晋侍)
<リアルライブ・コラム連載「新日Times」VOL.9>