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「渋井哲也の気ままに朝帰り」裏話を聞くタイミング

 キャバクラに通っていたり、キャバ嬢と付き合っていると、お店の裏話を聞く機会があるのではないでしょうか。今回は、そのタイミングについて考えてみたいと思います。

 やはり、裏話はなるべく知りたくないものです。というのも、キャバクラはある意味で、舞台だからです。その意味で、キャバクラは女優です。女優がなにをどのように努力している姿は見せないのに、嬢もなるべく見せてほしくないのです。

 しかし、舞台であると同時に、疑似恋愛の場でもあります。疑似恋愛の相手と位置づけると、発想は一転します。つまり、努力や裏話を知りたくなるのです。

 あるK嬢(21)と私は歌舞伎町のある店で出会いました。知り合いのボーイが独立したというので、お祝いに行ったことがきっかけでした。

 2人目に着いたK嬢を指名し、その後も何度か行くようになりました。最初のころは裏話はいっさいしませんでした。ちょっとしたプライベート話をしたくらいです。しかし、徐々に店の裏話をするようになってきます。同伴をドタキャンしたことがあるのですが、その頃から裏話が多くなったのです。

 「実は、あの店、(経営が)ヤバいんですよ。実際、私も2か月、給料が出ていないんです」

 ただ、移籍をしないのは、店長にすごくお世話になっているし、K嬢の心理状況をすごく考慮して働かせてくれているので、働く環境としては申し分ない、ということでした。そこには経営とは別に信頼関係があるのだな、と思ったものです。

 ただ、その店はその後、閉店して、結果としてK嬢は移籍せざるを得なくなったのです。その後、K嬢とはプライベートでもよく遊ぶようになりました。私は徐々に、彼女の世界に入り込めた感じがしました。

 しかし、嬢としての愚痴や店の裏話、プライベート話をいきなりすることは、萌えるどころか、萎えることになりかねません。

 先日、歌舞伎町のある店に行きました。そこの指名は本指名でも場内指名でも同じ料金です。私はその店には何度か行ったことがあるのですが、指名嬢はいません。そのため、60分の間に、4人の嬢たちが順番に席に着きました。

 4人目の嬢が座って間もないタイミングで裏話を聞くことになったのです。

 「私、この店のシステム好きじゃないんですよね」

 という台詞で始まったので、愚痴を話すのかと思ったのです。ところが、愚痴というよりは、店のシステムへの文句になったのです。

 「この店って、指名があっても、ずっとは女の子が席に着かないじゃないですか。必ず、セットの時間内で、女の子が別の席に行きますよね。あれって、指名がかぶっていなくても、するんですよ。あれって、お客さんは嫌じゃないですか。せっかくお金を払ってきているのに」

 なるほど。指名がかぶっていなくても、必ず席を立つ時間があるのですね。でも、それを仲良くなっていないばかりか、初めてあなたと話す私に言ってどうしようというのでしょうか。単純に、「へー、そうなんだ」と思うだけでなく、あなた自身に興味がなくなりますよ。

 キャバクラは疑似恋愛な場所なのです。ですから、仮に裏話を聞くとしても、仲良くなったから、店の事情や嬢のプレイベートの話が聞けた、と思いたいわけです。それを初対面のあなたに聞いてもまったく面白くないわけです。その嬢を指名したくなくなるばかりか、その店に行きたくないと思ってしまいます。

 嬢のプライベートを知りたい。でも、そのために距離を縮めたい。そんな欲求が客にはある。しかし、いきなり「素」を知ってしまうと、距離を縮めた後での「ご褒美」ではなくなってしまいます。そして、「高い金を払って、そんな素の女の子と飲みたくないよ」とも思ってしまいます。客とは妄想したい生き物なのです。

<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。

【記事提供】キャフー http://www.kyahoo.jp/

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