10年12月26日、アレクサンドル・ムニョスとの王座決定戦を制して、3階級制覇を成し遂げて以降、4度の防衛戦はいずれも、勝って当然のランキング下位の選手ばかりだった。V5戦で、ようやく強豪を迎えたことで、その真価が問われる一戦だった。
試合後、ルイスが「亀田は最初、逃げてばかり。1度も強いパンチはもらっていない」とコメントしたように、終盤を除けば、興毅は終始距離を取る戦法で、残念ながら激しい打ち合いにはならず。ダウンシーンもなく、ファンにとってはいささか物足りない試合内容だった。ただ、僅差とはいえ、難敵・ルイスを退けて、王者として一定の評価を得たことは確か。
今後については1階級下げて、スーパーフライ級に転向し、4階級制覇を目指すことが有力だが、「それも可能性の一つ。バンタム級に残って防衛したい気持ちもある」と明言を避けた。スーパーフライ級に落とした場合、次男で弟の大毅と同じ階級になってしまうため、その兼ね合いが問題となるが、来年中に4階級制覇に向かうことは間違いない。
V5戦の視聴率(以下すべてビデオリサーチ調べ、関東地区)は20.5%だった。瞬間最高は10回終了後の午後9時1分の25.1%。かつて、興毅の試合は毎回高い視聴率を弾き出していたが、バンタム級に転級してからは降下。王座決定戦(10年12月26日)=13.8%、V1戦(11年5月7日)=13.9%、V2戦(同8月31日)=16.7%、V3戦(同12月7日=セミファイナル)=10.2%、V4戦(12年4月4日)=14.6%とかげりを見せていた。
視聴率20%の大台を超えたのは、10年3月27日、ポンサクレック・ウォンジョンカムに敗れて、WBC世界フライ級王座から陥落した試合の22.1%以来、実に2年9カ月ぶりとなった。
今回の試合では叶姉妹の妹・叶美香がラウンドガールに起用され、1回と2回の間に、セクシーな衣装で登場したが、これも高視聴率の一因となったようだが、久しぶりに強豪と対戦することで、ソッポを向いていたボクシングファンが振り向いた可能性が高い。
興毅は視聴率に関して、「なんやかんやいうても、常にボクシング界は亀田中心に回ってるちゅうことや」と語ったが、好カードを組めば、まだまだ興毅には需要があることを証明した。今後はこれまでのように、勝てる相手ばかりをチョイスせず、いいカードを組んでくれることを切望するばかりである。
(落合一郎)