もちろん、ただ勝つだけでは意味がない。朝日杯はクラシックに直結しない。1994年の3冠馬ナリタブライアンを最後に、すっかりと定着してしまったこの“負のデータ”をはね返すには中身も要求される。無論、ダイドウにはそれができるポテンシャルが備わっている。とにかく、前走のデ杯2歳Sが強烈だった。
新馬→野路菊Sを軽く連勝しての重賞初挑戦となったが、デビュー2戦が逃げ切り勝ちだったのに対し、位置取りは後方4、5番手から。無理に抑えた感の強いこのポジショニングに、道中は口を割るほどの行きたがりよう。加えて勝負どころでは前が壁になり、なかなか外に持ち出せない。普通なら、間違いなくジ・エンドとなってしまうところだが…。「肝を冷やしたね。あれだけチグハグな競馬になってもうたら、さすがに負けを覚悟するわ。でも、それを勝ちよったし、逆にいえば馬込みが大丈夫ということも分かった。いい瞬発力も見せてくれたからな」
“予想外”の競馬に中尾正師は冷や汗をにじませたが、期待以上の収穫があったのもまた事実。「結果オーライやな」と最後は笑顔で振り返った。レース直後からここに目標を定めてきたとあって、中間は順調そのもの。1週前追い切りでは6F78秒8(ラスト3F38秒6→12秒9)という驚がくの全体時計を計時。その日のDWコースの一番時計をマークし、報道陣からも感嘆のため息を誘った。
「スッキリした体形で、ムダなぜい肉がないから調整はすごく楽。体はつくりやすいね。ストームキャットの肌にスペシャルウィークやからうるさいのは確かやけど、レースのときは装鞍所まではおとなしい。パドックからググッと気合が乗ってくる感じやね。オンとオフがはっきりしとる」続けて師はかつて手掛けたイブキマイカグラについての思い出をこう語り始めた。「イブキは丸い馬場を四角に回ってくるような馬で、管理するのにホンマ、往生したんや。戦闘態勢に入るとダイドウも手が付けられんところがあるけど、あれに比べると頭はええわな(笑)」
イブキマイカグラといえば1990年の阪神3歳Sで西の2歳王者に輝いた実力馬。師はそれと同等以上のジャッジを下している。「何度も言うけど、負けパターンの前走で、追い出したら一気に追い上げてきたやろ。あれでまた力を再確認させてもらったわ。中京で結果を出しとるように輸送も心配あらへん。ノンストップで?うん、そうやな。負けなしで(クラシックに)行こか。ワッハッハ」
東スポ杯2歳Sを制したフサイチホウオーに、札幌2歳チャンプのナムラマース、その他POGをにぎわす評判馬たちの多くは阪神・ラジオNIKKEI杯(GIII 芝2000m 23日)に駒を進める。一部では“空き巣”ともささやかれる朝日杯FSに挑むダイドウにとっては、圧倒的勝利こそが“至上命題”となる。