昨年オフ、プロ野球報道の主役は巨人だった。総額30億円とも伝えられた大型補強を行い、さらに、FA補強後の人的補償で相手球団に引き抜かれたのが、内海、長野といった投打の中心選手だったからだ。そんな3度目の登板となった原辰徳監督の第一歩は、批判的な声の方が多かった。
「各ポジションとも、選手が重複している。原監督は使いこなせるのか? 外部補強で若手が育たなくなるのでは…」
最大の懸念は「若手の出場機会」だったが、今季、投打ともに“ニューフェンス”が出てきたのではないだろうか。
ビヤヌエバ、中島宏之の加入で飽和状態と思われた内野陣にしても、北村拓己、山本泰寛、若林晃弘、増田大輝らが一軍デビューし、スタメン起用された試合でも、それなりの結果を残している。また、投手陣ではドライチルーキー・高橋優貴の開幕ローテーション入りは原監督の構想通りだったとしても、桜井俊貴、中川皓太、戸根千明、池田駿、高木京介、鍬原拓也ら伸び悩んでいた面々が奮闘している。
去年まで一軍に定着できなかった彼らと球場ですれ違っても、「誰だっけ?」と首をかしげてしまう。新シーズンを迎えるにあたって、原監督がチーム全体の背番号をシャッフルしたせいもあるが、巨人の世代交代は進みつつあるとみていい。
取材陣泣かせの「誰だっけ?」は、これだけではない。5月末に三澤興一ファーム投手コーチが一軍担当に配置換えされたが、5月半ば、木佐貫洋、杉内俊哉両ファーム投手コーチも一軍に同行していた。現役を退いてさほど時間は経過していないが、表情も少し変わってきた。
一軍と二軍の情報交換はもちろんだが、ファーム担当コーチに、一軍戦の調整、スコアラーからのデータ提供はもちろん、どんなふうにミーティングをしているのかを“体験”してもらい、若手が一軍に昇格する際に伝えてもらうためだ。
「首位広島との差がなかなか縮まりません。中川をクローザーとするブルペンは一軍経験の浅い選手ばかり。広島追撃に向けては、救援陣を安定させることが必須です。チームを活気づけるような若手が出現すればいいんですが」(ベテラン記者)
クローザータイプのリリーバーだが、残念ながら、ファームでは見当たらない。15日で32歳になる野上亮麿がリリーフで調整していたが…。5月の月間成績で負け越しても、チームの雰囲気は悪くならなかった。もうしばらくは、世代交代、首脳陣の情報共有による「誰だっけ?」で、乗り切ることになりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)