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黒田が減俸でもドジャース残留を選んだワケ

 黒田博樹(35)がドジャースと再契約したのは、11月23日(現地時間)。1年1200万ドル(約10億円)、再契約金も支払われるとのことだが、『残留』は決して得策ではなかったようだ。

 「広島ナイン同様、黒田にはマツダスタジアムを提供するつもり」
 広島東洋カープの関係者がそう言う。オフに黒田が帰国した際、練習場所として、カープ選手同様、マツダスタジアムを無償提供するとし、その旨はすでに黒田側にも伝えてあるという。
 2010年シーズン終了をもって、ドジャースとの3年契約が満了した。これを受け、古巣・広島は本気で黒田を奪還するつもりでいた。
 「黒田とドジャースの独占交渉権を切れたのは、13日でした。広島は球団本部長以下数名が、13日の交渉一番手を目指しての渡米の準備を進めていました。それを伝え聞いた黒田が国際電話を掛けてきたんです」(前出・同)
 球団本部長宛の電話で、黒田は「来年もメジャーでやりたい。やり残したことがある」と訴えた。「やり残したこと」とは、黒田が会見でも語っていた「ドジャースでワールドシリーズ制覇の夢」だが、それだけではない。

 日本でも市販されているメジャーリーグ選手名鑑や米スポーツ専門TV局・ESPNが伝えている黒田の昨季までの年俸は1300万ドル。3年間の通算28勝30敗、防御率3.60。先発投手として安定した数字を残してきた。100万ドルとはいえ、『減給』での再契約である。
 「ドジャースも経費節減に努めていますから、その影響でしょう。監督、コーチだけでなく、フロントも黒田を高く評価しています」(米特派員の1人)
 ドジャース以外のメジャー球団も黒田には興味を示していた。USAトゥデー紙が報じただけでも、ヤンキース、ロッキーズ、ダイヤモンドバックス、パドレスの名前があり、「巨人、阪神も調査も乗り出しており、ソフトバンクも本気で強奪を狙っていた」(球界関係者)そうだ。
 「パドレスは1400万〜1500万ドルのオファーを黒田の代理人に伝えていたようですね。ドジャースも複数年契約を提示していましたが、黒田サイドが『1年』に縮めてほしいと申し出たんです。広島に帰還するつもりがあるからでしょう」(前出・米特派員)
 ドジャース残留の決め手となったのは、「所属チームに愛着を持つ」黒田の性格もあった。また、家族もロサンゼルスでの生活を気に入っており、「転居したくない」と強く訴えていたそうだ。
 「黒田の再契約金ですが、ドジャース側の要望で2年に分割されることになりました。分割払いはメジャーでは珍しいことではないんです。ただ、減給に加えての『分割』ですからね。緊縮財政のドジャースは黒田に頭が上がらないはず。ビジネスに徹するとすれば、ドシャースよりも高い年俸を提示したヤンキースか、ダイヤモンドバックス、パドレスのいずれかと契約し、家族をロスに残す方法もあったのに」(前出・同)

 黒田はこの3年間、ガンの研究や啓発を行う活動に多額な寄付も行ってきた。日本の関係者によれば、自身の両親をガンで失っており、06年オフの米挑戦を1年延期させたのは、実父の闘病生活を支えるためだった。黒田は来年も寄付活動も続けたいとし、ロス(=ドジャース)残留を選択したという。
 何事もなければ、2012年シーズンは広島に帰還することになる。もっとも、ドジャースとの再契約は「100万ドル減」で済んだが、カープ帰還の際には「年俸が4分の1以下」になるかもしれない。兄貴分でもある野村謙二郎監督(44)が「帰って来い!」と強く言えなかったのはそのためか…。

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