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人間の胎児のようにも見える 不気味な半魚人のミイラ

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画像はイメージです。

 これは知り合いの山中さんから聞いた不可解な話である。

 山中さんが学生時代というから二十年近く昔の話である。彼の住む町に偏屈で有名な老人が住んでいた。その老人は多くの事業に成功しており、豊かな生活を送っていたが変わり者で周囲の他人を寄せ付けなかった。

 だが、ある日山中さんはその老人と仲良くなることに成功した。戦争中の負傷で右目、右手、右足にハンディキャップを抱える老人は基本車椅子生活であった。

 「ちくしょう、とれねえな」自動販売機の前で小銭を落として拾えず困っている老人に手を差し伸べたのだ。

 「これですね。どうぞ」笑顔で小銭を拾って渡してくれた彼の顔を見ると、老人は気味の悪い笑顔を浮かべ、自宅に招いてくれた。

 「ほう、おまえは良いやつだな、俺の家に遊びに来ないか」

 「ええっ、いいんですか」

 老人宅にあがった彼はその内装の豪華さに仰天した。贅沢な美術品や精巧な工芸品が山程おかれていたのだ。その中に奇妙なミイラがあることに気がついた。

 「なんですか、これは」

 何か両生類のようにも見えるし、人間の胎児のようにも見える。恐る恐るミイラを覗き込む彼の耳元で老人はしゃがれた声で言った。

 「この不気味な生物は、わしの守り神なんじゃよ、いひひひぃ」

 「このミイラが 守り神なんですか」

 不思議そうに聞き返した彼に向かって老人は戦争中の体験を披露した。南方で所属部隊が全滅中、老人は一人彷徨っていた。

 「ちくしょう、絶対に生き残ってやる」必死に海岸沿いの道を歩き続けるが、なかなか味方には合流できなかった。そのうち海面に黒い影が浮かんできた。

 「んっ、なんだ!!あれは」

 恐怖に震える老人に、その影が飛び掛ってきた。明らかに怪物であった。まるで半魚人のような人型の水棲生物であった。

 「わわわわぁぁぁ」

 怪物は老人の右手や右足に噛み付いた。凄まじい流血の中、近くにあった棒を使って反撃する老人。怪物を数回殴打したが、激痛とショックでそのまま気を失ってしまった。気が付くと友軍の野戦病院であり、左手にはあの怪物が小さいミイラになって握られていた。

 「わたしはどうしたのだ」

 「あなたは、右目、右手、右足に大怪我を負っているところを味方に助けられたんですよ」

 その後、終戦となるのだが、老人はそのミイラを肩身はなさず持ち歩いた。

 「以来、わしは株やギャンブル、企業経営などで負け知らずで、今の財産を築いたというわけじゃ」

 老人はそう言って、不気味なミイラを見て笑った。

 それから数日後、老人は海岸近くで遺体となって見つかった。残った左目、左手、左足を負傷した状態で死亡していたのだ。そして、外出するときはいつも身に着けていたあの半魚人のミイラは、そのまま行方不明となった。

監修:山口敏太郎事務所

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