8月の成績は14勝13敗となり、貯金1で終えた。スワローズとタイガースの下位球団に3タテを喰らい、ガタガタと崩れかけそうな時も、直後のカープ、ジャイアンツ相手に勝ち越し、なんとか踏ん張った。暑さの厳しい夏場。ドームでの試合は6試合のみ、しかもレギュラーキャッチャー・伊藤光、不動のサード・宮崎敏郎、剛腕セットアッパー・スペンサー・パットンをいずれも骨折で欠いた状況での戦いで、貯金を増やせたことは大きい。
それは、ラミレス監督の思い切った采配によるところが大きいだろう。8月のチーム打率.238でリーグ5位。同じく防御率は4.61で最下位。その中で2番サード・筒香嘉智に始まり、相手ピッチャーにより左バッターを7人並べる、先発で結果を出していた石田健大を再び中継ぎに戻すなどの“ラミレス・マジック”で、チームに勝利をもたらした。
また、いわゆる伏兵の活躍も目立った。8月10日にはドラフト2位ルーキー・伊藤裕季也がプロ1号2号のマルチホームランと派手な活躍。28日は延長12回2アウトから、山本祐大がサヨナラヒットを放つ。守備が自慢の柴田竜拓も、29日のゲームで猛打賞。フル回転の中継ぎ陣の中、今年は武藤祐太と国吉佑樹が“しびれる場面”での登板で結果を出すなど、ヒーローが日替わりで誕生することも、全員で戦ってきた証拠であろう。
シーズンも終盤に入り、指揮官からは「Day by day」と口にする場面が増えた。首位のジャイアンツとのゲーム差は4。直接対決を6ゲーム残しているだけに、大逆転優勝の目も大いにあるが、まずは9月3日からの「苦手」タイガース戦を落とすわけにはいかない。今年も7勝13敗1分とカモにされているが、胸突き八丁の9月、知将はどのように虎退治を考えているのか。そのタクトに注目したい。
写真・取材・文 / 萩原孝弘