今回、取り上げた「八尺様」の情報を整理すると、2m以上の巨大な女が若い男に目をつけ、とり殺すという物語が多く、鬼女や山女の伝承上に位置する現代妖怪談のように思える。「八尺様」が身につけている服装は赤い服とも、黒いロングコートともいわれているが、中には着物であったという話もある。
また「八尺様」の伝承地に関しても諸説あり、山陰、東北、北陸という候補地が噂されている。さらに、この妖怪は地蔵や塚を使って結界を張り、封印されているともいわれているが、数年に一度ぐらいの頻度で、人間を襲うとされている。一説によると、ある地域で結界が崩壊し、集落の外に逃走したとも噂されているのだ。
筆者のもとに送られてきた情報によると、「八尺様」に魅入られた人は、なかなか逃げきれないらしく、部屋中にお札が貼られた場所に隔離されるとも、僧侶4、5人で守護しないと危険であるともいわれている。だが、執念深い八尺様は、狙った男を何処までも追跡してしまうらしい。
それにしても、この現代の妖怪伝承は、民俗学なエッセンスも加味され、よく出来たキャラ設定も魅力的だ。間違いなく、現代の人気妖怪へと変貌するであろう。現代人がネットというコミュニケーションツールを使って流布させるアーバンフォークロア(都市伝説)は日々劇的に進化し、新しいストーリーを紡ぎ出す。去勢された草食男子が話題となる昨今、肉食女子の代表のような妖怪「八尺様」が噂になるのも、時代の必然なのかもしれない。都市伝説とは、その時代を生きる大衆の無意識が具現化するものである。
(山口敏太郎)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou