NHKマイルCに続き、メンバー最速の上がり(3F34秒2)を駆使してのV2となったディープスカイ。ダービーレコードで2冠を達成したキングカメハメハほどのインパクト(勝ち時計)がなかったことを抜かせば、評価されるべき史上2頭目の偉業達成だ。
こちらは史上初の2年連続ダービー制覇を成し遂げた四位騎手の読みもさえた。1番枠、4角15番手の状況でも、迷いなく直線は大外に進路を変更。馬場の悪い内を通るより、比較的馬場のいい外目を走った方が有利なのは、雨にたたられ続けた2、3回東京開催の“お約束ごと”。一番“切れる”馬に鉄則通りの競馬をされては、他馬にはもう勝ち目はない。
「最内枠だったので最初は内を突こうと思ったが、前が詰まりそうだったし、馬場も荒れていたから外に出した。勝つ時っていうのは、すべて“イメージ通り”になるものだね」と四位はしてやったりの表情だ。
敗れたある関係者は「表向きは混戦といわれていたけど、実は『1強17弱』だったんじゃないかな。一頭だけ次元が違ったという感じだもの」と馬の“すごさ”を説けば、ディープと同ローテのタニノギムレット、キングカメハメハでダービーを2勝している松田国師も「勝った馬は大外を回ったの?今までは外からは届かなかったけど、昨日の雨で内は伸びない馬場になっていた。(鞍上の)読み勝ちだね」と四位の判断を称賛した。
両者の口ぶりから伝わってくるのは「降参」の2文字。戦前、「世紀の大混戦」とうたっていたメディアとは対照的に、関係者の評価は意外にも高かったというのは実に興味深い。
気になる今後だが、前記したギムレット、カメハメハはともにこのレースを最後に引退。頼れるサンプルがなく、未知の領域となる“これから”はどういった道をたどるのか。秋は菊花賞のほかにも天皇賞・秋、マイル路線という3つの選択肢がある。史上初の変則3冠を狙うのか、それともいきなり古馬に挑戦状を叩きつけるのか…。
1マイル&チャンピオンディスタンスを制したことで、陣営はこの夏、ぜい沢な悩みの種を抱えることになった。