ワールドカップという大会は長いように見えて7連勝すればどの国でもジュール・リメ杯を掲げることができる大会だ。しかし、ワールドカップの長い歴史の中で、杯をその手中にすることができたのはいままでたった7カ国しかない。
事実、ほとんどの国がグループリーグのたった3試合だけで4年に一度の大舞台を後にする。短期間の大会の中でいかに初戦から勝つことが大切であるかということだ。
その意味では、今大会優勝候補筆頭のヨーロッパ王者スペインのワールドカップは終わったと言っていい。
16日に行われた1次リーグH組のスペイン対スイス戦。スイスは後半7分にフェルナンデス(サンテティエンヌ)があげた1点を守り切って1-0でスペインを破り、勝ち点3を獲得する番狂わせを演じた。
思い起こせば2002年の日韓ワールドカップ。ここでも開幕戦でジダン有するフランスがセネガルに負けるという番狂わせが起きた。その後フランスは1勝もできぬまま大会を後にしたことは記憶に新しい。過去のデータから考察しても初戦を落とした国は90%以上の確率で優勝していない。それどころか今大会のスペインはグループリーグを勝ち上がることすらないだろう。
なにせスペインはこの試合で持てるすべてのカードを見せてしまった。
シルバ(バレンシア)とペドロ(バルセロナ)はサイドから効果的な崩しを披露できず、期待の若手ブスケッツ(バルセロナ)も一人で違いを生み出すまでには至らない。さらに、故障明けのエースFWトーレス(リバプール)の仕上がり具合はまったくなこともライバル国にバレてしまった。切っていないカードといえばこちらもコンディションが気になるファブレガス(アーセナル)ぐらいのものか。
どんなにゲームを支配していていも相手のたった一回のチャンスに泣かされる。これがサッカーの悲劇でもあり、面白さでもある。
ただ、この試合を見る限り仮にスイスがグループリーグを突破したとしても大躍進は望めそうもない。虎の子の1点を守り切るサッカーだけではワールドカップでは勝てない。
試合後、多くの記者に囲まれたスペインのデルボスケ監督は「この結果は驚くことではない。まだワールドカップは残っている」と冷静にコメントした。スペイン国内では史上最高とも言われる今大会の無敵艦隊は、あと2試合だけでは帰国できない。