麻生氏発言への批判はすさまじかった。
「怒るというよりも、笑っちゃうぐらい、ただただあきれている。一昨日も首相から話がしたいというので電話で話した。首相の方針に批判的な意見を若手が出すと、執行部は『後ろから鉄砲を撃つな』と抑え込む。しかし最近の状況は(次期衆院選で)戦おうとしている人たちに首相が前から鉄砲を撃っているんじゃないか。『発言には気をつけてくれ』と言っておいた」(小泉氏)
郵政民営化に政治生命をかけた小泉氏が、麻生氏発言を不快に思わないはずがない。しかし、首相退任後の小泉氏はこれまで、現職の総理総裁を立てて表立った批判をすることはなかった。国民的人気の高い小泉氏が公式の場で首相批判を展開したことで、党内の倒閣運動が本格化する可能性が出てきた。実際、“小泉の乱”ぼっ発を耳にした森喜朗元首相は12日、「首相が余分なことを言うからこうなる」と不快感を隠さなかった。
麻生氏が「(民営化に)賛成ではなかった」と発言したのは決定的だったともいえる。しかし、決起のウラには竹中平蔵氏の影がちらつく。小泉氏は最近、現慶応大教授の竹中氏と会って麻生批判のボルテージをあげたとの情報がある。小泉内閣で金融担当相、経済財政政策担当相などを歴任した竹中氏は、いわば最高ブレーンであり盟友。構造改革を白紙に戻そうとする麻生氏憎しで一致し、倒閣に向けて小泉・竹中タッグが再結成されたとみていい。
小泉氏は会合で定額給付金を支給するための2008年度第2次補正予算関連法案の衆院再議決にも疑問を呈し、「あのとき賛成したけど実はそうじゃなかった、と(首相のように)言いたくないから」と痛烈に皮肉った。民主党からは「小泉氏の影響力は大きい。再議決で大量造反を誘うことができるかも」との期待感が出ている。
政調幹部は会合前に「小泉氏に苦言を呈してもらう方が党内が収まる」との期待感を示していたが、発言の衝撃はそれを大きく上回った。首相は10日に小泉氏に電話で発言の真意を説明、その際は「あのころはいろいろあったからなあ」と容認とも受け止められる対応だっただけに官邸サイドは戸惑いを隠せない。
麻生氏はいよいよ追い詰められた。