千秋楽での全勝対決は、隆の里(先代鳴戸親方)と千代の富士(現九重親方)の両横綱が対戦した83年秋場所(9月=蔵前)以来、28年10カ月ぶりで、横綱同士以外では史上初めて。
大関の15戦全勝は07年夏場所(5月=両国)の白鵬以来、5年2カ月ぶり。八百長問題が発覚して以降、ガチンコ相撲オンリーとなってからは初の全勝力士。白鵬は朝青龍引退後、1人横綱となってから初めて2場所連続で優勝を逃した。
先場所(5月夏場所=両国)は、横綱、大関の上位陣が総崩れ。千秋楽で12勝2敗の成績で優勝決定戦の舞台に立ったのは、ともに平幕の旭天鵬(37=友綱)と栃煌山(25=春日野)だった。決定戦は旭天鵬が制し、史上最年長優勝を果たしたが、日本相撲協会にとっては最悪のシナリオとなった。その点で、今場所は横綱と大関が全勝同士で、千秋楽で雌雄を決するという理想的な展開で、協会としてはホッと胸をなで下ろしたに違いない。
3度目の賜杯を手にした日馬富士。当然、秋場所(9月9日初日=両国)は綱獲りが懸かる。協会としては、長らく続いた1人横綱時代に何としても終止符を打ってほしいところだが、過去の日馬富士のデータを見ると大きな不安が覗く。
日馬富士はこれまで2度綱獲りに挑んでいるが、いずれもプレッシャーに負けて散々な成績に終わっている。09年夏場所で14勝1敗の成績を挙げ、白鵬との優勝決定戦を制し初V。初の綱獲りとなった翌名古屋場所は、9勝6敗と1ケタの成績に終わり、大きく期待を裏切った。その後、3場所連続で9勝しか挙げられなかった。
そして、昨年名古屋場所では14勝1敗で2度目の優勝を飾ったが、翌秋場所での2度目の綱獲り場所も8勝7敗で、勝ち越すのがやっと。翌々場所も8勝止まりだった。
優勝した翌場所では勝てないというのが、日馬富士のジンクスとなっている。「全身全霊で頑張ります」と綱獲りを宣言した日馬富士。過去のデータから見れば、来場所は期待薄だが、“3度目の正直”はなるのだろうか?
(落合一郎)