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最悪の展開となった大相撲夏場所 ふがいなさすぎた大関陣

 日本相撲協会にとっては、最悪のシナリオが待っていた。

 大相撲夏場所(5月6〜20日=東京・両国国技館)千秋楽、優勝決定戦の舞台に上がったのは、横綱でも大関でも役力士でもなく、東前頭4枚目・栃煌山(25=春日野)と西前頭7枚目・旭天鵬(37=友綱)。史上初、平幕同士による優勝決定戦は37歳8カ月の大ベテラン・旭天鵬が、はたき込みで勝利し、昭和以降での最年長優勝を果たした。平幕優勝は01年秋場所(9月・両国)での前頭2枚目・琴光喜(後に大関=引退)以来、10年8カ月ぶり。横綱、大関以外の優勝も、これ以来となった。

 14日目を終わって、大関・稀勢の里(25=鳴戸)、栃煌山、旭天鵬が11勝3敗でトップに並び、10勝4敗の横綱・白鵬(27=宮城野)、東前頭5枚目・隠岐の海(26=八角)、西前頭6枚目・碧山(25=春日野)が追走。史上稀に見る大混戦は千秋楽で3敗力士がすべて負け、4敗力士がすべて勝てば、史上初6人による優勝決定戦となるはずだった。

 ところが、千秋楽で栃煌山と対戦する大関・琴欧洲(29=佐渡ヶ嶽)が14日目の旭天鵬戦で右足を負傷。千秋楽当日朝、右足根骨じん帯損傷で全治3週間の診断を受け、休場届を提出。これで、闘わずして栃煌山の勝利が確定。この時点で4敗力士の優勝の可能性が消えてしまう、ドッチラケの展開となってしまった。

 千秋楽、琴欧洲の休場が場内にアナウンスされると、相撲会場では異例のブーイング。不戦勝の栃煌山は、ブーイングのなかで勝ち名乗りを受けるという異常な事態となった。

 琴欧洲の欠場には協会幹部も怒り心頭。北の湖理事長(元横綱)は「お客さまに申し訳ない、のひと言」と渋い顔。鏡山審判部長(元関脇・多賀竜)は、「前日に休場が決まっていたら割り返し(取組の変更)があったか」との問いに、「やらざるを得なかっただろうな」と話した。八角広報部長(元横綱・北勝海)は、「痛いなら前日に言ってほしい。這ってでも出てほしかった。師匠も自覚がない。朝早くから並んでくれたファンはどうなる?」と指摘した。

 師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は「大事な一番なのに、本当に申し訳ない。でも、あの足を見たら出ろと言えなかった。本人は痛みが治まれば、出たいと言っていた」とかばった。しかし、ケガとはいえ、休場して優勝争いを台無しにしてしまった琴欧洲の責任は重い。琴欧洲はすでに8勝6敗で勝ち越しが決まっていたが、もし7勝7敗であったとしたら、それでも休場しただろうか。自身の勝ち越しが懸かっていれば、這ってでも強行出場したかもしれない。

 琴欧洲がA級戦犯なら、稀勢の里もだらしなさすぎた。初日の相撲で左手人差し指をはく離骨折し、体調不良だった白鵬が9日目までに4敗を喫し、事実上脱落。稀勢の里は11日目まで10勝1敗で独走。ファンの誰しもが稀勢の里の初優勝を予想したはずだ。ところが、終盤に失速。12、13日目に連敗し3敗となって、栃煌山、旭天鵬と並んで迎えた千秋楽。勝って優勝決定戦に進出していれば、ファンの溜飲も下がったが、なんと大関・把瑠都(27=尾上)に逆転負けを喫して脱落。史上初の平幕同士による優勝決定戦を演出してしまった稀勢の里の責任も重大だ。

 史上最多の6大関で迎えた夏場所で、大関の責任といえる2ケタを挙げたのは稀勢の里(11勝)、10勝5敗の琴奨菊(28=佐渡ヶ嶽)の2人だけ。把瑠都は9勝6敗、他の日馬富士(28=伊勢ヶ浜)、琴欧洲、新大関・鶴竜(26=井筒)の3人は8勝7敗でかろうじて勝ち越すていたらく。

 この状況に、北の湖理事長は「優勝争いに加わったのは稀勢の里だけ。せめて大関の半分くらいは優勝戦線に残らないと。稀勢の里以外の大関は期待外れです」と、大関のだらしなさを厳しく言及した。

 何度も書いていることだが、相撲人気が回復するためには、白鵬を脅かすライバルの出現、大関陣の奮闘以外にない。毎場所、こんなことを繰り返していては相撲人気の回復など期待できない。優勝した旭天鵬には敬意を表するが、平幕に優勝を献上した大関陣には猛省を促したい。
(落合一郎)

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