私は元々、お肉が大嫌いだった。菜食主義者というわけでなく、単純に脂身とかスジの入ったお肉とかに当たると気分が最悪になるから、ずっと避けていた。基本的に食生活はシーフードや麺類ばかり。なのにこの前、お客さんからお肉を食べに行こうと誘われたんだよね。「もう予約してあるから」って言われて断れなかった。
ついていってみると、そこは焼肉のお店だった。まず焼肉って焼かなければならないのが、とてもめんどくさい。そのくせ私は神経質だから、きちんと全部に火を通さないと気がすまないんだよね。それなのに、「このお店の肉は一瞬あぶるだけでいい」と言われた。
不安になりつつ表裏を一瞬火を通した後、お肉を食べてみた。まず一番驚いたのは、想像以上に柔らかかったこと。そして肉嫌いを覆すほどのおいしさだった。たとえ嫌いなものでも、そのジャンルの高品質な食材と触れ合うことで好き嫌いの意識は変えられるんだなってその時はじめて知った。これからは安い店なら嫌だけど、ある程度のレベルのところなら、お客さんに奢ってもらってお肉に挑戦していこうと思う。こういう発見って肉嫌いを知っている友達との食事じゃ、なかったはず。だから新たな扉を開けてくれたお客さんには感謝してますね。
(取材/構成・篠田エレナ)