さて、今回は(11)の回でお話ししたあゆみさんと杉本さんの話の続きをさせて頂きたいと思います。
杉本さんは私やあゆみさんが勤めていたキャバクラの“アラフォー”従業員で、あゆみさんの夫になりました。しかし彼らにはいつも金銭的な問題がついてまわり、ある日杉本さんは、お店の売上金を全て持ち去り、音信不通になりました。
私もあゆみさんと連絡が取れなくなり、妊婦である彼女を心配していました。
それから2か月後、突然知らない番号から連絡が。なんとあゆみさんだったのです。「今まちこの家の近くまで来てるから会えないかな」私はもちろん、と、すぐにあゆみさんに会いにいきました。
近所の喫茶店で待ち合わせをした私たち。彼女のお腹もすっかり大きくなって、夜の女の面影もなく、表情はすっかりお母さんに。
「まちこ、なんで杉本が店から金を盗んだと思う? 全部、私のせいなの」
「え? どういうこと?」
話を聞くと、あゆみさんはキャバクラ時代に何年も、同じ男に貢いでいた。男はヴィジュアル系バンドでプロを目指すバンドマンで、音楽の機材やライブ費、時には家賃まで(同棲した時期もあったとか)全てあゆみさんもち。元々金遣いが荒いあゆみさんの性格が災いし、次第にヤミ金に金を借りるようになった、と。
「つまり、あゆみさんが男に貢いで膨ませちゃった借金を、杉本が店の金盗んでまで返したってこと?」
「そういうこと」
一時期800万近くに達した借金は、あと少しで完済できる、というところまできているのだそう。
「ねえ、マネージャーに正直に話して、お金、返しなよ。お店のお金だよ?」
私が伝えると、
「そのつもり。実はもう謝罪はしてあるの。今、杉本は朝も昼も夜も、一日中働いてるわ。私がこんな身体だからね。でも愚痴の1つも言わないの。もうすぐ父親になるってのが励みなのかな」
ちょっと不安そうな、でもまっすぐで前向きな彼女の瞳に私は心を打たれました。そこには女の強さがにじみ出ていましたから。
今日はオープン前のお店からお送りしました。ではまた来週。
文:秋田まちこ
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