10月19日 原辰徳監督の退陣会見
10月20日 高橋由伸に監督就任を要請
10月21日 野球賭博事件に関するNPBの調査発表
10月22日 監督不在でのドラフト会議
10月23日 高橋由伸が監督要請を受諾
10月26日 就任会見
巨人の指揮官交代の流れを振り返ってみると、駆け足だったことが分かる。ひょっとしたら、『野球賭博事件』も影響しているのかもしれない。球団内調査では「福田聡志投手だけ」としていたが、NPBの追跡調査により、笠原将生、松本竜也の2投手の名前が新たに浮上。これを受け、原沢敦専務取締役球団代表も引責辞任しており、一連のダーティーイメージを払拭するため、クリーンな高橋由伸に監督を要請したとも取れなくはない。
しかし、関係者に話を聞いてみると、高橋監督が選ばれたのは賭博事件とは関係なかった。しかし、高橋由伸でなければならない理由はあったようだ。
「巨人には生え抜きのOBから監督を選ぶ不文律の伝統もある」(プロ野球解説者)
そんな声もよく聞かれる。
前任の原辰徳氏は13年オフに新たに2年契約を結び直し、15年シーズンを戦った。前政権を合わせて計12年となる長期政権によるマンネリズムからも、シーズン途中から「新監督が招聘される」と見るメディアは少なくなかった。次期監督の本命と目された松井秀喜氏が前向きだという話は一切なく、
「江川卓氏でないとすれば、内部昇格ではないか」
と予想する向きもあり、大多数は川相昌弘ヘッドコーチ(当時)の名前を挙げていた。
阪神の和田監督の退陣が明らかになった直後もそうだった。「外部招聘でないとすれば、平田勝男ヘッドコーチ(当時)が相応しい」との声が出ていた。
両球団とも予想に反して、チームに新しい風を吹き込んでくれそうな新人監督を選んだ。
「メディアが川相、平田両ヘッドを後任に予想する声は球団にも届いていました。でも、両球団とも前政権を支えた筆頭コーチの昇格は考えていなかったようですね」(前出・プロ野球解説者)
プロ野球の監督とは、勝つだけでは務まらない。プロ野球は人気商売でもあり、勝ってもお客さんが集まらなければ成り立たないのだ。巨人、阪神の両伝統球団は、采配の未経験者でも、ファンが「何かやってくれるのではないか」と期待を持たせてくれる人材を選ぶべきと判断したのだろう。セ・リーグの監督は全て40代となった。この年代はサッカーよりもプロ野球を好む。今まで以上に強い思い入れを持って観てくれるかもしれない。
「これまではON人気に頼ってきました。近年までその遺産にすがり、経営を続けてきた感も否めません。ONを知らない世代にも長くプロ野球を愛してもらうにはどうすればいいか、ファンと同年代の監督を選べば、これまで以上に感情移入してくれるのではないか」(球界関係者)
その是非はともかく、プロ野球界の監督人選は、知名度、人気も加味しなければならないのである。よって、監督の現役時代のポジションはさほど重要ではないというわけだ。