search
とじる
トップ > スポーツ > 西武・涌井までついに年俸調停の波紋

西武・涌井までついに年俸調停の波紋

 球団側と4度の交渉にもかかわらず、現状維持の2億円からの上積みがなく、未更改の西武・涌井秀章投手(24)が、ついに加藤良三コミッショナー(69)に年俸調停を申請した。ソフトバンク・柴原洋外野手(36)に次いでこのオフ2人目で、球界に波紋が広がっている。

 涌井本人は年俸調停のプラス面をこう強調している。「調停というシステムにマイナスイメージを持っている方がいると思いますが、球団と僕の考え方や、1年間チームのために頑張った僕の思いを第三者の方に聞いていただく立派なシステムです。このシステムを使い、球団とより良い話し合いができるようになれば良いと思っています」と。
 が、西武・渡辺久信監督が、日本ハム・ダルビッシュが1億7000万円増の史上最速の5億円プレーヤーになった際に、「一番気にしている選手だろうから涌井も意識するだろう」と、涌井への悪影響を心配していた通りの結果になったと言える。代理人の大友良浩弁護士が調停申請書にパ・リーグ他球団エース級の成績と年俸を資料として添付したということからも、涌井のダルビッシュへのライバル意識がわかる。
 「ダルビッシュ選手の年俸5億円という金額が出たからということはないが、彼は彼なりに考えがある。周りの投手も見て希望額を出している」。大友弁護士もこう認めている。

 昨年、ペナントレースの大詰めでKOされ、V奪回失敗の戦犯扱いされているが、チームトップの14勝をあげるなど5年連続二ケタ勝利をマークしている涌井に対し、ダルビッシュは12勝。涌井が調停申請書にダルビッシュの5億円資料を提出したのもわかる。
 それにしても、過去申請をしたのが8人、受理された選手は、01年の日本ハム・下柳剛ら6人しかいなかったのに、今回一度に2人も年俸調停を申請しているのは異例だ。涌井の場合はダルビッシュへのライバル意識もあるが、それだけではない。それだけ球界全体の景気が冷え込んでいるのだ。ダルビッシュは今シーズン終了後にはポスティングシステム(入札制度)を使ってメジャーへ行くことが既定路線になっており、30億円前後と予想される落札金の中から、餞別金を前渡ししたようなもので、あくまで特例に過ぎない。
 ダウン限度額の40%を大幅に上回る減額でモメテているソフトバンクの柴原のケースも、その背景に新年俸システムがある。昨年までのソフトバンクの査定方法ならば、25%ダウンで済むはずが、「インセンティブを多くする」という、成功報酬額重視の新システムによる大幅ダウン提示。柴原だけでなく。ソフトバンク選手全体の反発がある。
 「7年ぶりに優勝したのに、これから先のことになるインセンティブの比重が大きくなったら、働いた分の評価はどうなるんだ」。こう激怒したエース・杉内俊哉の契約更改交渉が大荒れ、最後は笠井オーナー代行が登場してようやく一件落着したのも、新年俸システムが元凶だった。
 「メジャーリーグでは年俸調停は日常茶飯事。選手の言い分が正しいか、球団側の主張を認めるか。第三者による調停委員会が二者択一でハッキリ決める。これまで日本の場合は、調停委員会のメンバーがコミッショナー、セ・パ両会長の3人という球界3首脳で構成されていたために、選手の方でも『どうせ球団よりの裁定になるだろう』というあきらめムードもあったから、年俸調停は少なかった。が、球界景気が冷え込んでいるし、調停委員会のメンバーも一新されたから、今後、日本球界でも調停申請者が増えるのではないか」
 メジャーリーグ通の球界関係者がこう今後の見通しを語る。確かに、セ・パ会長職が廃止されたこともあり、現在の調停委員会のメンバーは一新されている。申請を認めるかどうかはコミッショナーの権限だが、調停委員会はコミッショナー直属の調査委員会のメンバー3人だ。委員長はコミッショナー顧問で元検事の熊崎勝彦氏。他の2人の委員は、V9巨人のエースで巨人投手コーチ、ヘッドコーチ、さらに巨人監督を歴任した堀内恒夫氏と弁護士の石塚久氏。

 3人の中でも特に現場を知り尽くす球界OBの堀内氏には注目が集まるだろう。選手として査定され、コーチ、監督として査定してきた経験が豊富だからだ。そんな堀内氏のいる、第三者による調停委員会が、年俸調停申請者の激増につながるかどうか。今回の柴原、涌井の結果にかかってくるのは間違いないだろう。

関連記事


スポーツ→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

スポーツ→

もっと見る→

注目タグ