総務省は10年12月から今年1月に行政評価を実施。全国545カ所のハローワークのうち31カ所で、求職者930人、求人1395件を抽出して調べた。その結果は、あまりにもずさんなものだった。
職業紹介や職業訓練の相談を受けた場合、担当者がシステムに具体的な内容を入力することになっているが、求職者から複数回の相談があった例を含め、計1万682件のうち71%の7589件は日付だけで白紙だった。
また、ハローワーク側が求職者の希望する勤務地を知らなかった例が29カ所で117人分あり、希望する仕事を把握していないケースも29カ所67人分あった。紹介する側が、求職者の希望する勤務地や職種を把握しておくのは初歩的なことだ。
さらには、飲食店での接客業務を希望した求職者に、職業訓練としてコピーライターの養成講座を受けさせた上、希望しないビジネスホテルや法律事務所、劇団などの仕事を紹介、すべて不採用になったという、とんでもないケースもあった。
実はハローワークを通じた就職率は30%程度と低迷している。そのため、総務省は求職と求人のニーズが一致しない「雇用のミスマッチ」の解消に向け、この調査を実施したが、求職者の立場に立った相談環境になかったことが判明した。ハローワーク側は調査に対し、「次の相談者を待たせるわけにはいかない」などと求職者の増加を理由に挙げたという。
総務省は「情報を正確に把握できないと採用には結び付きにくい」と指摘。基本業務の徹底を求めて、1月31日付で、厚生労働省に改善を勧告した。
(蔵元英二)