報道によると、番組に寝坊したのはTBSの局アナウンサー・古谷有美アナウンサーで、理由は明らかになっていないが、起床時間に起きられずTBSまでたどり着く事ができず、朝7時の番組終了まで出演できなかったとされている。
昨今のテレビ番組において、レギュラー出演者が遅刻するのは珍しく、しかもTBS社員である局アナウンサーが、朝寝坊で番組ひとつを丸々飛ばし(無断欠席)てしまうのはあまり聞いたことがない。
しかしながら、TBSには過去、アナウンサーだけではなく、スタッフ全員のミスにより生放送が飛んでしまった、という信じられない放送事故があった。
1973年7月29日放送の討論番組『時事放談』(TBS系列、第一期は1957年〜1987年)では、出演者が集まっているのにも関わらず、スタッフ全員がスタジオに現れず約18分放送できなかったのだ。
この日の『時事放談』は、番組レギュラー兼司会の政治評論家の細川隆元が、ある政治学者と生討論をするため、午前8時過ぎにTBSのスタジオに到着した。ところが、放送開始の8時30分が近づいてもディレクターやスタッフは現れず、スタジオは暗いままだったという。
細川が、近くにいたTBSの局員を捕まえ現状を伝えると、TBS局内は大パニック。局内にいたカメラマンや照明マンを捕まえ、なんとか番組はスタートしたしたものの10分弱しか放送できなかった。
この珍事件を報じた毎日新聞の記事によると、この日は当初、信越放送からの中継を予定していたが、放送3か月前にTBSスタジオからの中継に変更。ところが、スタッフのミスでこの日の日程表を「信越放送制作」としたままだったために、撮影スタッフ全員がTBSのスタジオに集まらなかったというのだ。
『時事放談』は1973年の時点で放送16年の長寿番組であり、スタッフ間での「慣れ」が事故を招いた模様だ。
なお、放送できなかった時間は、TBSは短編映画を流して間をつなぎ、残り放送時間5分で当初の政治討論を行うことになったが、当然討論になるわけがなく、細川は「これじゃ君、言論弾圧だよ!」とスタッフを叱責する声がお茶の間に流れたという。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)