横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督の2015年に誕生した子供は、ダウン症を発症して産まれて来たが、隠すことなく自らのTwitterでその事実を公表した。ツーショット写真も披露し、ポジティブに誕生を喜んでいた。それはこのコメントに良く表れている。「産まれてくる息子がダウン症だと分かった時、神様によってもっと祝福されたのだと思いました。なぜなら、神様は選ばれし人にしかスペシャルニーズのある子どもの親になる機会を与えてくださらないと思ったからです」。前向きで、息子に対する愛情に溢れている。
欧米諸国ではダウン症、脳性麻痺、自閉症、ADHDなどの、障害を持った子供達の事を、直訳の「Disability」ではなく、特別なケアが必要との意味の「Special needs」を使うことが多いと、知人のアメリカ人やカナダ人から聞いた。日本でも「障害者」の「害」は、物に使うべき漢字で人に使うべきではない、との意見や、ひらがなの方が柔らかく感じる、などの理由から「障がい者」と表記することが多くなるなど、時代によって変化をみせている。ラミレス監督のような、ポジティブな考え方が、少しづつでもマジョリティになっていける流れになってきているのだろう。
☆”スペシャルニーズ”のために
東日本大震災の際も多額の寄附をしていた、社会貢献に積極的なラミレス監督が今回、自らの子供と同じ境遇の子供達のために、新しい試みを企画した。5月10日に発売されたLINE公式スタンプ「ラミちゃんボイススタンプ」の売上利益を、スペシャルニーズのある若者達をサポートするグループに寄附すると言う。このスタンプはユニフォームやスーツ姿のラミレス監督が、「VICTORY」、「ファイト」など野球に関連したワードを、表情豊かに表現している、音声付きのユニークなスタンプ。ファンの多いラミレス監督のスタンプは、ベイスターズファンのみならず、他球団のファンとのやり取りにも喜ばれそうだ。
☆差別の無い世界へ
松野明美や奥山佳恵のように、自分の子供がダウン症だと公表する有名人も、最近は見受けられるようになってきた。松野は故郷・熊本で県議会議員となり、ダウン症の人たちのために活動している。彼女らやラミレス監督のように、当事者がポジティブに考えられるようになれば、世間の偏見も変化するだろう。ボランティアや直接の寄附はハードルが高くても、スタンプを購入することで社会貢献が出来る。入口はいろいろ。野球からでもラミレス監督からでも、彼女らの著書を読むことでもいい。社会的な問題に目を向けるキッカケになればいい。触れることが難しいセンシティブな問題だけに、発言力のある人間の行動はとても大きな意味を持つ。
取材・文 / 萩原孝弘
写真提供 / (C)横浜DeNAベイスターズ