同年の夏には、菅田将暉の主演映画「アルキメデスの大戦」にも出演。菅田といえば、昨年大みそかの「第70回NHK紅白歌合戦」に歌手として初出場を決め、俳優として、歌手としてノリに乗っているが、そんな注目作でも爪痕を残していた鶴瓶。今月発表された「第62回ブルーリボン賞」の作品賞に、ノミネートされた。
「アルキメデスの大戦」は、戦艦大和の建造をめぐるさまざまな謀略を描いたマンガを実写化。日本と欧米の対立が激化する昭和8年、日本帝国海軍上層部は巨大戦艦「大和」の建造計画に期待を寄せていたが、海軍少将・山本五十六が待ったをかけ、計画の裏に隠された不正を暴くために天才数学者・櫂直(かいただし)と手を組んで、戦争を阻止しようとするストーリーだ。
鶴瓶は、菅田扮する櫂の考えに賛同し、協力する大阪の小さな造船会社・大里造船の社長を演じている。原作では「鶴辺(つるべ)清」という役だ。
これは、原作者の三田紀房さんが大の鶴瓶ファンだったことで生まれた名前。ふくよかで細い目、薄い頭皮にメガネをかけた容貌の“つるべ”は、鶴瓶をモデルに描いたものだ。「ヤングマガジン」(講談社)への連載中から、鶴辺=鶴瓶であることを明かしていたため、待望の実写化が決まり、配役にホンモノが登場した際、原作のファンは大喜びしたという。
そもそも同作と鶴瓶には、妙縁があった。雑誌関係者は言う。
「鶴瓶さんには、京都産業大学時代に出会った同級生で、22歳で結婚した奥さんの玲子さんがいます。有名企業の社長令嬢だった彼女との交際に、お義父さんは猛反対。結果、駆け落ち婚しました。当時、お義父さんは広島県呉市で本物の戦艦大和を塗装した会社の社長。映画にも出てくる菊の金箔を貼った張本人です。それが昭和、平成、令和と時を経て、娘婿が船に関わる人を演じることに…。信じられない巡り合わせです」
家出同然婚だった彼女とは、今もラブラブ。昨年、結婚45年の節目を迎えた。長男は、俳優で音楽ユニット・Human Noteのボーカリストでもある駿河太郎。昨年は、多くの主演作に恵まれ、俳優としての評価は高い。
日常生活の中から笑いをピックアップする天才、鶴瓶。義父、息子と、歩みの全てに意味をもたらせる天才でもあったようだ。
(伊藤由華)