勝負にこそ敗れたが、アーリントンCのローレルゲレイロで見せた男・本田の闘魂騎乗は「これぞ、真剣勝負の叩き合い」という競馬の醍醐味を深くまぶたに刻ませた。同着重賞Vという誰もが予想だにしなかった筋書きのないドラマで、今年も勝利の女神が天から舞い降りてきたエイシンドーバー・湯浅師の阪急杯。そして、ファイナル日曜阪神12R(25日)では、な、なんと、瀬戸口師→鹿戸幸師のワンツーフィニッシュでエンディング。
ターフを去りゆく人たちに、これほどまでに名残惜しさを感じたのは、長きにわたる記者人生においても初めてだし、偉大なるホースマンの今後に幸多かれと祈らずにはいられない。
もっとも、そんな記者の思いとはよそに、「これからはオレたちの時代」といわんばかりに若い息吹は着実に芽吹いている。とりわけ開業3年目にしてGI制覇を達成。しかも、過去10年を振り返っても伊藤雄二、藤沢和雄という東西の名伯楽が独占していた最高勝率調教師の栄えあるJRA賞を奪取した殊勲の池江泰寿師の前途は洋々だ。
「3歳馬がキッチリ2勝したことと、古馬500万馬がキッチリ勝てたことが受賞の最大の要因ではないでしょうか。古馬の1000万、準オープンとなると出走できるかどうか分からず、調整が難しいですからね。今年は障害戦にもチャレンジしたい。ダービー以降は除外で優先権が発生しますから」とは鋭い分析とチャレンジ精神おう盛な若き名トレーナーの弁だ。
そして、そんな師がしかとクラシックの頂きを見据え、今週の弥生賞に送り出すのが昨年の2歳王者に輝いたドリームジャーニーだ。
「1週前の追い切りが強すぎて、あれで一気にテンションが上がってしまって、レースでも出遅れ。反省する点は多かった」と振り返った東スポ杯2歳Sこそ3着に敗れたが、すかさず、その反省点をバネにして、「ソフト調教に即座に切りかえたし、当日はパドックから返し馬までメンコ装着した」と、対策を講じた朝日杯FSは万事休すの最後方から”異次元の末脚”を繰り出し、見事、4戦3勝の好成績でチャンピオンの座を射止めた。
あれから3カ月。「体重は今で10kg増だけど、首回りや腰回りにいい筋肉がついて、数字以上にボリューム感が出ている。先週あたりから常歩(なみあし)のキャンターでもピリッとしてきたし、競馬が近いことを察知している」と、ケイコ役の吉村助手は前走後のスケールアップにお墨付きを与える。
「ちょっと今週のケイコが速くなっちゃって少しオーバーワークだけど、ホント、ここまで予定通りにきましたからね。最優秀2歳馬の名に恥じないよう、ここを制して皐月賞本番を迎えたい」
ドリームジャーニー。そのネーミング通り、2007年のクラシックの夢の旅路は、この弥生賞から始まる。