今春は賞金不足に泣いてきた。ストロングガルーダは昨夏の新馬戦で1番人気に応え快勝。新潟2歳Sこそ7着に大敗したが、くるみ賞をレコード(芝1400メートル1分21秒6)で勝ち、NHKマイルCに狙いを定めた。だが、ステップとなるはずのNZTが悪夢の除外。「あれは痛かった」と尾形助手が振り返るように、春は悔いばかりが残った。
陣営はその悔しさを胸に、愛馬の夏休み返上を決意。1000万・エーデルワイスS快勝後の今回を秋のGI戦線への一里塚と位置付け、必勝の布陣を敷いた。
道中は中団の位置取り。「思ったよりモタモタして、行きっぷりが悪かった。手応えもさほど良くはなかったしね。外枠でもあったし、ヒヤヒヤした」(蛯名騎手)と、初の右回り、小回りコースに戸惑いを見せた。
それでも、「先生(久保田調教師)は弱気だったけど、僕はいけると思った。調教ではコーナー、コーナーできっちり手前をかえていたし、自信はあった」とは尾形助手。直線ではその期待に応え、荒れ馬場をモノともせず、上がり3F35秒8の末脚で早め抜け出しを図ったサニーサンデーを捕らえた。
「直線でエンジンに火が着いた感じ。まっすぐ伸びてくれたし、間に合うなと思った」。2着馬とはクビの差だったが、蛯名はそれ以上の完勝とも言いたげな表情。いずれにしても、この一戦で秋に向けて明るい未来を切り開いた。
「折り合いもスムーズだったし、力強くなっている。これで使いたいレースに使える」とジョッキーが言えば、「馬は本物。これからが楽しみ」と不在のトレーナーに代わり、重賞初制覇を見届けた尾形助手も成長に目を細めた。
今後については「まだ何とも…」(同助手)と未定だが、「距離はマイル前後がいいでしょうね」と話しており、マイル戦線への挑戦が濃厚だ。
ガルーダとはインド神話に登場する神鳥。2歳時から注目を集めた素質馬が、雌伏の時を経て大きく翼を広げた。秋には悲願のGI獲りへと羽ばたく。