同大会はなでしこ的には、さして重要な位置付けではなく、あくまでも目指すのはロンドン五輪での金メダル。そこに向けての実戦練習的な大会であった。佐々木則夫監督はエース澤穂希(33=INAC神戸)ではなく、宮間あやを新主将(27=岡山湯郷)に指名。積極的に若手選手を起用した。
澤は初戦(2月29日=ノルウェー戦)こそスタメン出場したものの、第2戦(3月2日=デンマーク戦)は出場せず。第3戦(3月5日=米国戦)、ドイツとの最終戦は体調不良を理由にベンチにも入らず、宿舎で静養した。澤の体調に関しては詳細な発表はなく、関係者からは「めまいや立ちくらみがする」「風邪っぽい」といった話がもれ伝わってきただけ。
なでしこは澤が不在でも、米国からは1-0で史上初勝利を挙げ(W杯でのPK勝ちは公式には引き分け)、強豪ドイツには3-4で惜敗したものの、澤のポジションには宮間が入り、十分機能することを見せつけた。宮間は準優勝ながら、大会MVPを獲得し、“ポスト澤”として強くアピールした。そもそも、ドイツはロンドン五輪には出場しないため、負けても大きな問題はない。
佐々木監督は「ステップアップできた。経験の少ない選手もいろいろと経験して、レベルが上がってきた」と満足げ。澤は2月上旬に右ふくらはぎの肉離れを起こしており、始めから無理をさせないことは明らかであった。澤がチーム事情のため、仮病で欠場したとはいわないが、澤抜き体制確立への布石が打てたことは大きな収穫だった。
テレビ視聴率はノルウェー戦=18.7%(関東地区)、デンマーク戦=16.1%、米国戦(深夜)=15.9%、ドイツ戦=21.7%で、澤欠場でも影響ないことを示した。
澤といえば、CMやテレビ、イベント出演など副業で多忙。年齢を考えても、澤依存症から脱却する必要性に迫られている。その意味でも、アルガルベ杯は意義ある大会であったといえよう。
(落合一郎)