お水の世界は楽で華やかな世界だと思われがちです。けれど、お水の世界は強い精神力と体力がなければ勤まりません。遊び感覚や小銭稼ぎのつもりでいつまでも浸かっていると、あっという間に自分自身を失ってしまうのです。
お水の仕事を“上がった”今でも、たまに食事をする元お客様がいます。その方とは、ホステスを始めて3カ月、新人の頃に出会った方です。ホステスとなじみになってくると、一線を越える関係を求める方が圧倒的に多い中で、この方が一度も話題に触れることすらありませんでした。(魅力がなかったのかも)
お水の世界に入って丁度1年が過ぎようとしていた頃、個人の売上もそこそこあり、収入もびっくりするほどありました。買い物好きな私は、一円も余すことなく買い物へつぎ込みました。はたから見ると、その様子は“異常”だったそうです。
一度買い物をすると満足はするのですが、またすぐに“何か”欲しくなってしまうのです。いただいたお給料は、私の元へ留まることなく素通りしているだけでした。
お店でイベントあるから、とある日その方と一緒に衣装を買いに出かけた時のことです。衣装を買うついでに、と私はあれやこれやといつものように買い物を始めました。
その様子を見た彼は、「お前、貯金いくらあるの?」といきなり聞いてきました。「あるわけないよ! いきなりそんなこと聞いて、失礼ね」と私。その時は「だよなぁ…」と彼はつぶやくだけだったのですが。
買い物から数日後、携帯に一通のメールが届きました。「野球の試合を観に行こう」彼からでした。
もともと野球を観るのは好きだったので、「行きます!」と快諾。プライベートでお客様と会うのは、本当はあまりよろしくないのですが…。
待ち合わせをして、まず向かったのはなんと、銀行!! 「貯金のないお前は、まず貯金用の通帳を作れ!」意味がわかりません。親でもないのに、何故そこまでされるのか…。
しつこく反論する私に彼は言いました。「いいか、今のお前は買い物依存になってるぞ! 自分でも知らないうちにストレスが溜まってるんだ。店を辞めろとは言わないけど、自分の先の事をよく考えろ」
納得はしないが、怖くて渋々通帳を作った私。でも、結局その通帳にお金が預けられることはありませんでした。
けれどその一言がきっかけで、買い物を少しだけ控え、自分自身の将来について少しずつ考え始めるようになったのは間違いありません。
私は今でも貯金は苦手です。けれど、そのまま居続けていたら今の生活はなかったな、と感じるこのごろです。
ライター:西田ひより(竹内レイから改名)
1986年生まれ 愛知県在住
元キャバクラ嬢の経験を生かした恋愛テクニックが得意
http://ameblo.jp/rei-takeuchi/