「ユニホームを脱いだ1年目の去年は、いろいろお世話になった恩返しの意味もあって、来る仕事をすべて引き受けて、忙し過ぎた。2年目は少しセーブしないとな」。こう言っていたのに、昨年以上の大忙しぶりだ。
「野球界にとって王さんに代わる存在はいない。仕事を減らすのは無理でしょう」と明言していたのは、親交があり、王会長にコミッショナー特別顧問をお願いしている加藤良三コミッショナーで、その通りの展開になっている。野球界に限らず、ワールドワイドな話題に対応して球界を代表するコメンテーターとして、右に出る者がいない巨人・長嶋茂雄終身名誉監督の代役の仕事もある。楽天・野村克也名誉監督が解離性大動脈瘤の疑いで慶応病院に入院していたことが判明したときにも、「早く良くなってノムさん節を聞かせて欲しい」とコメントしている。
古希という区切りの年だけに、マスコミ側からすれば、改めて世界の王こと王貞治氏の偉大な野球人生を振り返るという意味もある。さらには、ソフトバンクの話題性の乏しさがある。
エース・杉内俊哉はリーグを、いや日本球界を代表する左腕として注目度が高く、話題性に事欠かないが、その他には全国区的な話題の人気選手はいない。かつては「ムネリン」と呼ばれて大人気だった川崎宗則も、日本代表遊撃手の座を西武・中島裕之に奪われてからは福岡の地方区になってしまっている。
となれば、ソフトバンクとしては、ワールドワイドなネームバリューのある王貞治球団会長に頼るしか手はない。7月に福岡ヤフードーム内に『王貞治ミュージアム』を開設すること一つでも、集客力に関するその依存度がわかるだろう。
加藤コミッショナーが喝破したように、今後も王球団会長の露出が増えることはあっても減ることはないだろう。