これまでメジロラモーヌ(1986年)、スティルインラブ(2003年)の2頭しかまだ成し遂げたことのない牝馬3冠へのチャレンジ。しかし、ブエナにとって未知の戦いになる世界戦に比べれば、ハードルは低い。同じ3歳牝馬が相手なら、春に見せつけた規格外の末脚がある。もちろん、松田博調教師も絶対の自信を見せる。
「前走の札幌記念はあれだけ引っ掛かっていたし、外へもふられたから仕方ない。今度は京都の内回り戦だけど、直線の短い札幌よりレースは楽になる。能力通りなら結果は出せるよ」
札幌記念後はノーザンファーム、山元トレセンを経由して9月19日に栗東へ帰厩。慢性的な爪の不安を抱えているものの、順調に調整が行われてきた。1週前にはWコースで6F83秒4、ラスト1F11秒7の好時計をマーク。同師も本番を前にして状態面の良さに太鼓判を押す。
「前走時はダートでしかやれずに歩様が小さかった。今回はウッドで乗り込めているので、フットワークものびのびしている。トモの張りも抜群やね」
同厩舎で、名牝と呼ばれたベガは93年に桜花賞、オークスを制覇。しかし、エリザベス女王杯(現秋華賞)で惜しくも3着に敗れて3冠の夢を逃した。その時に味わった悔しさとともに、競馬の怖さも同時に知っている。それでも、師は一貫してこれまでと同じ姿勢を貫く。
「ベガの時とは状況が違うし、マスコミが騒いでいるだけでワシは意識してへん。重要なのはここまで変わることなくきたこと。何も変わらんのが一番なんや」
そのままの姿で能力を出し切れば、必ず勝てる。指揮官の信頼感はもはやベガの比ではない。
何より札幌記念の敗退によって巡ってきたチャンス。春と変わらない姿、変わらない能力の違いで豪快に3冠を決める。
【最終追いVTR】Wコースで6F82秒7→66秒7→51秒9→37秒9→11秒5(直一杯)。長めから目いっぱい追われた先週に続き、今朝も攻めのケイコ。3頭併せで前の2頭を2馬身後方から追走。4角で内から抜き去るとラストはこの馬らしい豪快な伸び脚を見せた。ゴール板では6馬身先着。これで態勢は整った。