光緒帝(張博)の師である楊喜のもとへ西太后(田中裕子)から贈り物として靴が届き、それを履いた楊喜はサソリに刺されて死んでしまう。側近・梁文秀(周一囲)は、混乱を恐れて師の死亡を隠す。皇帝と西太后の知らないところで、不吉な陰謀が仕組まれていた。そんな騒動の後、皇帝に政権を渡し、田舎に隠居するため紫禁城を後にする西太后の前にダイナマイトをぐるぐる巻きにした改革派の家来・順桂が現れ…。
策略や陰謀、殺人をもいとわない権力争いの中で強い心をもって生きてきた西太后。さすが演技派女優の田中裕子だけあって、厳しい中にも聡明な一人の女性権力者として女帝を熱演。(監督は中国スタッフ)日本人にも分かりやすく、今や経済大国になった中国の、近代化の一歩をリアルに見せてくれる貴重な作品ね。美男美女の中国スターがたくさん出ているけど、日本人俳優では当時としてはめずらしいカメラマンの役で小澤征悦が登場。とにかく宮廷の豪華なセットもすごいし、手の込んだ小道具や家具、中国シルクの絨毯、衣装や西太后の重そうな髪飾りに至るまで、清朝の歴史的な美意識が細部にまでびっしり再現されていてキレイ。中国に旅行したくなっちゃうわ。
ところでNHKの特番で言ってたんだけど、美人の手足を切り落として壺に入れた残酷な女帝は、実は西太后ではなく、西太后より1000年以上前に生きた、武則天(則天武后・そくてん ぶこう)らしいって。中国でもいまいちこの二人の女帝の認識がごちゃごちゃになってるという事。西太后はみんなが思うより女性らしい人物だったらしく、そう考えるとラストに流れるあゆの歌もなじむのだけど、西太后的にはこの歌どうなのかしら。ご本人に聞いてみたいわ。(チャッピー)