巨人の新入団選手が神奈川県川崎市のジャイアンツ寮に入寮した(1月6日)。注目はドラフト1位の沢村拓一投手(22=中央大)で、新人合同自主トレでもキレのある動きを見せていた。2011年シーズンの活躍を確信した球団関係者も多かったが、「今季が勝負の年」となる若手がもう1人いた。3年目の大田泰示内野手(20)である。
「今季、最低でも一軍に定着できなければ、一流選手にはなれないだろうね…」(球界関係者)
巨人は選手層の厚いチームである。大田が二軍で主に守ってきた三塁には亀井義行(28)がコンバートされ、一塁にも小笠原道大(37)がいる。20歳という若さからして、もうしばらくは二軍でジックリ育てるのも間違いではないだろうが、プロ野球界で「スター」と称される選手の大多数は“早熟”だ。『背番号55』の前任者・松井秀喜(36)もルーキーイヤーこそ苦しんだが、プロ2年目の4月に『月間MVP』を獲得するなど、飛躍のきっかけを掴んでいる。今季、一軍で実績を挙げなければ、大田は本当に“並の選手”に落ちぶれてしまう。
「系列新聞社が『今年ブレークしそうな選手』として、大田を取り上げていました。巨人を背負って立つ選手になれるか否か、今年がラストチャンスだというのは、読売グループも察しているんでしょう」(前出・同)
亀井の三塁コンバートは12球団トップと言っていいハイレベルな外野手層から弾き出されたためでもある。亀井は昨季の不振を払拭する意味でもこのコンバートをモノにしようと必至だが、
「将来的に、亀井は外野一本でやりたいと思っている。その自己主張をするための実績作りとして出場機会の増える三塁へのコンバートを受け入れた」(チーム関係者)
とのことだ。亀井のバットが復調すれば、来季以降、三塁のポジションは『空席』となるわけだ。
こうした亀井の気持ちは大田も分かっているだろうが、三塁のポジションを狙うライバルはかなり多い。09年クライマックスシリーズで勝負強さを発揮した脇谷亮太(29)、守備力に定評のある寺内崇幸(27)、08年高校生ドラフト1位・藤村大介(21)等々…。
「大田はむしろ練習量も多い方。性格もマジメですが、それが欠点のように思います。打撃フォームを変え過ぎています」(プロ野球解説者の1人)
ルーキー・沢村は“大田の後輩”になるが、年齢は『上』だ。沢村に限らず、今季、即戦力と称される新人投手たちは『自分』を持っている。斎藤佑樹(22=日本ハム)は在学中に何度も投球フォームの改良を勧められたが、首を縦に振ろうとしなかった。
「沢村は放っておいても1人で練習もでき、調整もできる大人です。自分に合う練習メニューを見つけたからでしょう」(前出・同)
大田は“後輩・沢村”に刺激を受けるだろう。原辰徳監督も大田には期待を寄せている。しかし、教育の一環で「今季は突き放す」との情報も流れている。大田に危機意識が芽生えなければ、巨人は高校、大学球界から新たなクリーンアップ候補を発掘しなければならない。