この大谷の意思表示だが、日本ハム球団の影響を強く受けていたようだ。
「野茂英雄氏の長男が球団通訳を務めています。野茂氏はメジャー7球団を渡り歩き、現在もパドレスのアドバイザーという肩書を持っています。それから、木田優夫氏もいますからね」(ベテラン記者)
木田氏は先のドラフト会議で清宮幸太郎の抽選クジを引き当て、一躍「時の人」となった。肩書はゼネラルマネージャー補佐、メジャーリーグだけではなく、日本の独立リーグにも在籍した経験豊富なプロ野球OBであり、シーズンオフはバラエティー番組にも出演し、芸能人との交流も深い。その木田氏の影響を指摘する声が多く聞かれた。
「木田氏は清宮を引き当てた後もタレント名を出して、その人の助言のおかげとか言っていたように、『軽いイメージ』もある。でも、本当は、野球界全体のこと、プロ野球の今後について深く考えている人なんです」(球界関係者)
木田氏はドジャースで強い衝撃を受けたとされている。ド軍の往年のプレーヤーに、ジャッキー・ロビンソンがいる。有色人種のメジャーリーグ参加の道を切り開いた功績は有名だが、ド軍は新入団選手に必ずその話をするそうだ。
「ド軍の所有施設にゴルフ場があったんです。『なぜ、ゴルフ場があるのか』を説明するんです。有色人種のジャッキー・ロビンソンが差別を受け、オフのチーム納会で彼だけがゴルフ場に入れなかったこともあり、だったら、自分たちでゴルフ場を造ってしまおう、と。そういうメジャーリーグの歴史を教えられるんです。木田氏はメジャーリーグの歴史、伝統を大切に捉えています」(前出・同)
日ハム内では「大谷の本命はドジャース」と見る向きがある。木田氏の影響だろう。
また、こんな情報も聞かれた。“浪花節”である。
「いちばん最初に、大谷にアプローチした米球団はドジャースなんです。彼が高校一年生のときですよ」(アマチュア球界要人)
大谷の母校・花巻東には米球界に対する“免疫”がある。大谷と入れ代わるようにしてプロ入りした菊池雄星(26=埼玉西武)がいたからで、当時はNPBよりも米スカウトのほうが熱心に学校に通いつめていた。もっとも、菊池の西武入りと同時に彼らは撤収したが、ドジャースのアジア地区担当スカウトだけは違った。一年生夏の大谷を見ていたという。先のアマチュア球界要人によれば、「単なる偶然」とのことだが、大谷サイドは「いちばん始めに自分を見てくれたプロスカウト」ということで、好印象を抱いていたそうだ。
元NPBスカウトがこう続ける。
「最初に自分を見てくれたという出会いを大切にする指名選手は、今でも多いんです。今はウェーバー制だから、希望球団があっても、そこに必ず指名されるという保証はない。でも、指名挨拶で『最初に自分を見てくれた球団に指名されて、嬉しい』と話す球児もいてね」
大谷が高校時代の出会いを今も大切にしている可能性は高い。
「ヤンキースは良くも悪くも保守的な球団です。二刀流という新しい挑戦を認めず、途中から投手か、野手のどちらかに専念させてしまう危険性もあったと思います。二刀流を貫けば、中4日で定期的に5人の先発投手をまわすローテーションは成立しません。その懸念は他の米チームも抱えており、交渉は意外と長引くと思う」(米国人ライター)
“浪花節”を大事にする大谷のハートを掴むのはどの球団か。投手と野手の二刀流が他投手の協力がなければ成立しないとすれば、出会いを大切にする大谷の本心とはかけ離れているような気もするが…。