「11月28日は『世代交代』を象徴する一日となりました」(取材記者の一人)
同日、内海哲也(35)と菅野智之(28)が契約を更改した。内海は2勝7敗、防御率5点台、二軍落ちの屈辱も味わったからか、50パーセント減額となる1億円の提示を受け入れ、「不甲斐ない。(来季は)1試合でも多く、1日でも長く一軍にいられるよう…」と神妙な面持ちで語っていた。2017年の推定年俸は2億円、一昨年は4億円だった。半分ずつ減っていく内海に対し、菅野は推定4億5000万円で一発サインとなった。今季は2億3000万円だったので、“倍増”である。
「チームは優勝できませんでしたが、菅野にとっては良い一年だったと思います」(前出・同)
開幕前の第4回WBCでは日本代表のエースとして好投し、米スカウトを唸らせた。自己最多の17勝もマークし、防御率は防御率1・59。最多勝、最優秀防御率のリーグ二冠王に輝き、さらに沢村賞も初受賞した。「日本のエース」となりつつある。
そんな菅野に対し、多くの若手が「自主トレに連れて行ってください」と集まり始めているという。これまでも菅野は何人かのチームメイト、他球団の親しい選手と集まって自主トレを行ってきたが、この勢いでいくと、チーム最大の自主トレグループになる。
「これまで、投手陣をまとめてきたのは内海です。その内海の自主トレグループと菅野のグループの両方をはしごしていたのが宮國(椋丞)なんですが、宮國は菅野一本に絞り込む予定だと聞いています」(関係者)
内海と菅野は張り合っているわけではない。内海に限らず、野手組のドン・阿部慎之助は常日頃から世代交代を訴えており、菅野が投手の最大派閥になることは、むしろ歓迎しているような節も聞かれた。しかし、世代交代とはそんな単純な話ではない。
「来季、高橋監督で本当に優勝できるのかどうか…。チームは4年連続、高橋監督自身、3年続けて勝てないとなれば、当然、フロントも考えなければなりません」(前出・取材記者)
“有事”に備えて、急浮上してきた後任候補がいる。原辰徳氏(59)だ。原氏は侍ジャパンの代表監督候補にも挙げられていたが、実現しなかった。NPBに詳しい関係者によれば、「原氏本人が現場復帰に消極的だった」とのことだが、古巣が困っているとなれば、話は別。また、本人にその気がなくても断れないだろう。
「原氏に3度目の監督登板の話が出てきた理由は簡単です。監督適齢期のOBのなかに他に相応しい人がいないからです。中畑清氏はDeNAの監督を務めたので巨人指揮官になったら、二番煎じのようで新鮮味がありません」(前出・関係者)
また、原氏の再々登板なら高橋監督も傷つかない。「前任者に戻し、チーム再建を果たしたら再登板」の筋書きも作れる。しかも、チーム最大派閥となり、これからチーム全体に睨みを利かす立場となるのは、甥っ子・菅野である。自らがレギュラーに抜てきし、チームの精神的支柱に成長しつつある坂本勇人もいる。菅野の更改した年俸はおそらく、日本人選手のチームトップとなるだろう。これによって、原氏を再々登板させやすい環境も整ったというわけだ。
「広島、DeNAは生え抜きの野手が育ち、阪神も遅々としてですが、その方向を目指しています。20代の新しいレギュラーを育てることが急務」(プロ野球解説者)
菅野は自分に厳しく、自主トレでも一切手抜きをしないそうだ。そのストイックな姿勢が、集まり始めた若手に伝われば、高橋監督のままでも十分勝てるのだが…。