「私の場合、営業メールでノイローゼになりました。元々、友達ともそんなにメールをする方ではなかったですし、一通返信するだけでけっこう時間がかかってしまうんですよね」
美雪の元には客から様々なメールが届いた。“食事にいこう”“ドライブに連れて行ってあげるよ”“映画を観に行こう”というデートの誘い以外にも、“ホテルへ行こう”という直接的な内容のメールが、指名もされていない色々な客から毎日届いていたという。
「なんとか相手の気分を害さないように、細心の注意を払って断りのメールをするんですけど、怖いのはその後なんです」
そして少し返事が遅れただけで激怒するメールを送ってくる者も少なくなかった。また美雪がデートに応じないとわかった客は、彼女に対してありとあらゆる誹謗中傷のメールを送りつけた。“バカ”“ブス”“アホ女”“死んでくれ”“ヤリマン”など酷い言葉並び、それが何通も送られてくることも珍しくないという。そんなメールを返信しているうちにプライベートの時間もどんどんなくなっていった。
「もっと怖かったのが、そういう陰湿なメールを送ってくる人ほど、店内では凄く優しい印象だった人が多いんです。中傷メールを送ってきたにも関わらず、平気な顔でまた来店する人もいましたし」
店内では時給のためと、接客をがんばることのできた美雪だったが、プライベートまで客からのメールに悩まされ、不眠症となってしまった彼女は、夜の世界を棄てることを決意した。
現在はショップ店員として都内の服屋で働いている。セクハラの心配もない同性を相手とした接客は、キャバクラ時代と比べれば精神的には楽だという。
(文・佐々木栄蔵)