かつて日本で最も知られ、濫用された魔薬である。
ギリシア語の「労働を愛する(philoponus)」から名付けられた説が有力だ。
メタンフェタミンは静脈注射により摂取する。
気分が高揚し、幸せで自信に満ちる。
疲労感もなくなり、集中力や運動能力の増大など、たくさんのメリットがあるのだ。
勘違いしてはならないのは、作業能力は増し長時間の労働に耐えうるが、正確さは向上しない。
中毒症状としては、頭痛や妄想、抑鬱、血圧上昇など。
慢性的に使用すると、少量では効かなくなり、薬量が増えてくる。
慢性中毒としては、幻覚、狂暴性、脱力感。
弱いが禁断症状があり、薬をやめてもフラッシュバックが10年以上続くこともある。
日本語における俗称、シャブ、エス、スピードは、メタンフェタミンを表すことが多い。
スピードボールとは、コカインとヘロインなど二種類のドラッグカクテルのことを言い、メタンフェタミンとの直接的な関係はない。
日本でヒロポンが濫用された背景には、第二次世界大戦が大きく関係している。
戦時中、特攻隊の戦意高揚や工場での作業効率向上に大いに利用されたのだ。
戦後大量のヒロポンが流出し、不安を抱えた国民はその薬にすがりついた。
当時、子どもから老人まで、幅広い一般人がヒロポンに汚染された。
その人数・割合は、全国民数の五分の一にも達していたと言われている。
覚せい剤取締法が制定された1951年をピークに、ヒロポンも徐々に姿を消した。
まさしく、戦中と戦後を代表する“魔薬”だったのである。
現在ではヒロポンは、ごく限定的な医療用途での使用以外の所持、使用、生産は禁止されている。
(「レズビアン記者」立花花月 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou