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〈企業・経済深層レポート〉 価格が安くて品質良好 コーヒー業界で人気爆発中のベトナム産

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提供:週刊実話

 コーヒー豆といえば、日本ではブラジルなどの南米が頭に浮かぶ。実際、日本への輸入でも常にブラジルがトップ。ところが近年、ベトナム産のコーヒー豆の輸入量が急増し、ブラジルに肉薄する勢いだという。

 財務省の「貿易統計」によれば、日本のコーヒー生豆国別輸入量は2010年時点でブラジル12万3073トン、2位はコロンビア7万9060トン、3位インドネシア5万9068トンで、ベトナムは4位5万4737トンだったが、’18年にはブラジル11万1955トンに続いて、ベトナムが9万8513トンの2位に浮上している。

 「そもそもベトナムのコーヒー豆栽培は、1850年代のフランス統治時代にフランス人から栽培技術がもたらされた。本格的栽培はベトナム戦争後の’86年のドイモイ(経済開放政策)から。外貨獲得のための輸出農産物としてベトナム中西部の高原を中心にコーヒー栽培が始まっています。日本への輸出シェアは1991年ではわずか1%。それが’95年には10%、2018年には24・5%と大躍進しています」(総合商社勤務の男性)

 なぜ、ベトナム産コーヒーの需要がここまで高まっているのか。

 コーヒー業界に詳しい経営コンサルタントは「理由は3つある」と分析する。1つは“技術の進化”だ。

 「ベトナムで生産されているコーヒー豆は、9割以上が渋くて苦みが濃いのが特徴のロブスタ種で、ストレートでは飲みづらい。一方、ブラジルの主流コーヒー豆のアラビカ種は、酸味と苦みのハーモニーが絶妙で日本人好み。ところが、最近はロブスタ種とアラビカ種を混ぜたレギュラーコーヒー(添加物を加えていない焙煎されたコーヒー豆、またはそれを挽いた粉末)を作り上げる技術が進化したことで、絶妙な味の商品が多く生まれています」

 最近はベトナムコーヒーに新しい風も吹き出した。

 「本格的コーヒーでは、アラビカ種が主流でした。ところが、品種改良、精製プロセスの見直しでアラビカ種越えのロブスタ種が生まれつつあります。単にアラビカ種100%のコーヒーよりロブスタ種が混ざったブレンドコーヒーのほうが美味しいと指摘する人も出始めています」(コーヒー専門店のバリスタ)

 2つ目の理由は“価格”だ。

 「アラビカ種は、1000〜2000メートルの高地栽培。また、コーヒー樹にとっては天敵のカビの一種、サビ病にかかりやすい。品種改良や消毒薬も進化し、サビ病はだいぶ防止できるようになったが完全な撲滅にはいたっていません」(同)

 このサビ病に加えアラビカ種は、1年ごとに豊作と不作を繰り返し、そのたびに価格の乱高下が起きる。不安定要素が多いためアラビカ種は高値取引となりがちなのだ。

 「逆にロブスタ種はサビ病などの病害虫に強く、さらに、暑さにも強いことから安定した供給が可能。そのため、価格はアラビカ種より低めで安定もしているのです」(同)

 全日本コーヒー協会の算出によれば、’18年のベトナム産コーヒー豆の1キロ当たり輸入平均単価は210円。ブラジル産が319円、コロンビア産364円に比べれば、それらのアラビカ種より3割前後安い。当然、アラビカ種とロブスタ種混合のレギュラーコーヒーの価格も安くなる。需要促進につながっているのは明らかであろう。

 3つ目は、日本人の“ライフスタイルの変化”だ。高齢化社会や若い人の晩婚化などで、単身世帯の増加が進んでいることも大きいという。

 「一人暮らしの方には、抽出に時間が掛かるコーヒーよりも、お湯を注ぐだけで手軽に飲めるスティックタイプのインスタント製品が好まれています。単身世帯の増加と供にインスタント需要が高まっていますが、インスタントで使われるコーヒー豆は、ロブスタ種がほとんどです」(前出・総合商社勤務の男性)

 こうしたベトナム産コーヒー需要の高まりから、大手総合商社の丸紅は今年6月、約127億円を投じ、’22年稼働予定でベトナムの工業団地に、年産1万6000トンのインスタントコーヒー工場を建設する。

 「今後、20億人の人口を抱える中国や東南アジアではコーヒーを楽しむ人口がさらに増える。そして、日本でも需要がより伸びると確信しての動きです」(同)

 さらに、世界的な兆候でロブスタ種に注目が集まっているという。

 「地球温暖化の影響で、アラビカ種の育成が難しくなることが懸念されています。その意味でも、暑さにも強いロブスタ種の注目度が高まることは間違いありません」(同)

 ベトナム産コーヒーの躍進は、もうしばらく続きそうだ。

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