昨年とは違う姿での出走だ。これまでは立ち回りのうまさ、競馬センスの良さで活躍してきたトーホウアランだが、今年に入り一変。レースでの爆発力、1段上のギアを手に入れた。
「6歳となった今年、肉体面が急激に良くなってきた。それもあって、これまでにはなかった切れ味が出てきた。前走も負けはしたけど、いい脚を使っている」。藤原助手はイメージを一新した新生アランを強調する。
その朝日CCは休養明けに加え、勝負どころでは馬群に包まれるロスがあった。いつもなら惨敗のパターンだったが、直線だけで3着まで盛り返した。この内容には、鞍上の鮫島騎手も「脚を余しながら、よく追い込んでくれた。力をつけている証拠だね」と満足げな表情を浮かべる。
そもそも藤原英厩舎といえば、無理使いは避け、馬の成長をじっくりと見守っていくスタンス。この“ゆとり教育”により、エイジアンウインズ(2008年ヴィクトリアマイル勝ち)やサクセスブロッケン(09年フェブラリーS勝ち)が素質を開花させた。同じようにアランも今年に入って急成長。それがこれまでにない切れ味へとつながった。
「ここの結果次第だけど、いい勝負をすれば天皇賞・秋へ行くつもりだよ」と藤原助手の期待は膨らむばかり。忍耐強い育成法によって、遅ればせながら本格化した6歳牡馬が、秋の勢力図を塗りかえる。