岩隈投手は大阪近鉄バファローズのエースとして活躍後、2004年に発生した球界再編騒動を機に近鉄とオリックスの合併球団であるオリックス・バファローズ入りを拒否し、新球団の東北楽天に入団。2008年には21勝を上げるなど活躍し、2012年からアメリカ・メジャーリーグのシアトル・マリナーズでプレーしていた。
メジャーでも2年連続2桁勝利するなど活躍し、2016年には自己最多となる16勝。その安定した投球は、高い評価を受けていた。ところが2017年に故障すると、2018年もほぼシーズンを棒に振り、日本球界復帰を決断。移籍先が注目されていた。
球界再編を主導した渡辺恒雄氏が大きな影響力を持つ巨人入団の可能性は低いものと見られ、楽天復帰濃厚と見られていた岩隈投手だが、まさかの巨人入り。6日現在契約内容は発表されていないが、巨人が破格の条件を出したものと推察される。
巨人は今オフFAで広島・丸佳浩外野手と西武・炭谷銀仁朗捕手を獲得し、自由契約となったかつての大物オリックス・中島宏之内野手を獲得。それに加えて、日米通算170勝の大物を獲得することになった。
大物を次々と獲得した巨人にジャイアンツファンは歓喜しているが、他球団のファンは「目に余る乱獲」「お金で人のものを取るな」「ふざけるな」と怒る人が続出。さらに、「若手がかわいそう」「選手を育てる気がない」「由伸監督がかわいそう」など、哀れむファンもいる。
一方で、熱狂的な巨人ファンは「これでこそ巨人」「何を言われようと金で選手を獲得するのは悪いことではない」「楽しみ」という声を上げている。ただし一部では、巨人ファンからも「いらない」「若手を育ててほしい」「時代が逆戻りして悲しい」などと、否定的な意見な声が聞こえてくる。賛否両論であるようだ。
野球関係者はこう語る。
「岩隈・中島・炭谷はすでにピークを過ぎた選手で、全盛期のような活躍は望めないことは自分でわかっている。しかし、中島・炭谷は1億を超える年俸をもらっており、しかも複数年。岩隈もおそらくそのレベルの契約だと思われます。
今後の丸も同様になると思いますが、ピークを過ぎた選手ほど複数年契約は魅力的です。条件がよく長年数の巨人に行きたいと思うのでしょう。正直セリーグはレベルが低いし、天下り感覚なのではないですか。」
さらに、野球関係者はこう続ける。
「複数年契約の選手は総じて最終年度以外は手を抜く傾向がある。巨人で言えば、森福允彦はFA移籍後1軍でもロクに投げていませんが、3年4億超の契約と見られている。山口俊も1年目は暴力事件を起こすなどして、謹慎処分を受けた。
岩隈は楽天時代の監督野村克也氏が、『あいつは二流。よく登板回避を申し出てきた。若手に見習うなと言っていた』と揶揄している。肩に不安がある現状では、『投げたくない』と申し出ることは十分有り得る。せいぜい今年の松坂大輔(中日)のような使われ方になるのではないかと」
そして、巨人についても厳しい見方を示す。
「巨人は高橋由伸監督が若返りを図り、岡本和真・吉川尚輝・大城卓三・田中俊太・重信慎之介を積極起用し、結果を出し始めていた。二軍には和田恋やら若林晃弘もいる。今回のFA乱獲は、そんな芽を摘むことになる。
地域密着が進み、『野球=巨人』ではないうえ、未だに全国区を自認し地域を軽視する巨人の人気は以前ほどではない。そこに長嶋茂雄監督時代のような『強奪』を繰り返せば、巨人ファン以外が面白いはずはなく、ファンを減らすことにもなりかねません。
むしろ、アンチを増やす結果になるでしょう。球団の功労者だった高橋由伸前監督や、自由契約となった上原浩治投手への愛のない仕打ちと若手軽視は。当の巨人ファンも怒りを感じています。大田泰示(日本ハム)にように他球団で開花することも考えられますしね。
実際、丸の移籍で巨人を憎んでいる人は広島界隈を中心にかなり多い。自らが望み正当な手続きを踏んだ移籍は認められるべきものですが、ファンにはファンの感情がありますから、『嫌い』という人が増えても仕方ない。球界の盟主ではなく、球界の悪役として生きていくしかない」
なりふり構わない補強で、セントラルリーグのMVPやパシフィックリーグの顔を乱獲した巨人。彼らが額面通り働く可能性はいかほどだろうか。
文 櫻井哲夫