さて、今回の『水曜日のダウンタウン』と同様、テレビ番組の企画で人が集まりすぎて中止となったケースは昭和の時代にも発生している。
1969(昭和44)年8月21日の午後11時25分頃、愛知県中区の栄公園でフジテレビ系の人気番組『テレビ・ナイトショー』の生中継イベントが行われた。この際、今回の「クロちゃん騒動」にも匹敵する約5千人もの若者が集まり、生放送が中止となる事案があった。
『テレビ・ナイトショー』は日本テレビ系列の深夜番組『11PM』に対抗しようと放送開始。今の深夜番組ではあまり例のない制作方式だが、『テレビ・ナイトショー』は曜日によって制作局を替えていた。月、水、金曜放送分はメインのフジテレビ、火曜放送分は関西テレビ、木曜放送分は東海テレビが制作を担当していた。
今回の事件は木曜日、愛知県に本拠を置く東海テレビの制作分で発生した。中継先は同局の地元の栄公園。しかも生放送ということもあり目立ちたがりの若者数千人が集結した。一部の若者は仮設舞台に上がり「バカな番組はやめろ!」と叫んだほか、舞台上で殴り合いの喧嘩を始めるなどパニック状態に。
この日の企画は「最後の夏を若者たちと楽しもう」ということで、司会の俳優・児玉清のほかゲストの歌手・由紀さおりなどがステージに上がり、トークや歌謡ショーを行う予定だった。しかし群衆の暴動は収まることを知らず、由紀さおりはパトカーで会場から避難。児玉清も命からがら逃げたが、放送は20分間中継しただけで中断となった。
幸いケガ人らしいケガ人は出なかったものの、本事件は全国紙の新聞に「若者五千人が騒ぐ」という見出しで大々的に報道されてしまった。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)