さて、この『真田太平記』であるが、実は放送開始早々、著作権トラブルが発生している。
『真田太平記』のOPは、実写映像とCG(コンピュータグラフィックス)を組み合わせた特徴的な映像が使用されているのだが、このOPの製作者名が第5話より別の人間に差し変わるという事件が発生した。これは製作を請け負ったコンピュータ学校と、原画を製作した孫請けのイラストレーターとの間で、どちらの名前をクレジットするかで争いが起きたためで、イラストレーター側がコンピュータ学校を相手取り、186万円の損害賠償を求める裁判を起こした。
訴えによると、1985年の2月頃、NHKがコンピュータ学校へ『真田太平記』のOP製作を依頼。コンピュータ学校の代表は旧知の仲であるイラストレーターにCGの原画を依頼し、仕上げはコンピュータ学校で着色しOP映像を仕上げることとなった。
しかし、ここでひとつトラブルが発生した。
コンピュータ学校の代表はイラストレーターへ原画を依頼する際、「『真田太平記』のOPに名前をクレジットする」と約束し、イラストレーターは格安の値段で製作を請け負ったのだが、実際に放送されたOPにはイラストレーターの名前はなく、コンピュータ学校代表の名前が記載されていたのだ。
イラストレーター氏は『真田太平記』のOAに合わせて、コンピュータグラフィック雑誌に自身の特集の掲載が決定しており、カラー4Pの紙面が割かれる予定だったのだが、『真田太平記』の1話にイラストレーター氏の名前が記載されなかったために掲載が見送られ、186万円はボツになった雑誌記事含む損害賠償を訴えるものだという。
当時の新聞記事などによると、コンピュータ学校は当初、イラストレーター氏の名前を出すようNHKに依頼したが、NHKがイラストレーター氏のクレジットを拒否したため、仕方なくコンピュータ学校代表の名前を記載したというが、NHKは「(学校代表からの)依頼があればイラストレーター氏の名前を記載した」と証言している。
この騒動により、『真田太平記』のOPクレジットは、第5話よりCG製作者が変わっており、1985年11月5日には朝日新聞紙上で本件を特集する記事が掲載されている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)