「勝つために、優勝するためにやっていくぞ! 良いときも驕らず、悪いときも…」
チーム関係者によれば、そんな檄が発せられたそうだ。
先発投手の頭数は揃いつつある。エース藤浪晋太郎(23)は「エース特権」を剥奪され、キャンプ中盤までに“結果”を出せなければ、開幕二軍ということも十分にあり得る状況。復活に期待するファンも多いが、裏を返せば、藤浪不在でも戦える布陣になったわけだ。
「金本監督が自信にあふれたコメントを発するようになったのは、ロサリオの獲得に成功してからです。一発の期待できる不動の4番候補をずっと欲していましたから」(プロ野球解説者)
野手陣の顔ぶれも決して引けを取らない。鳥谷、福留の両ベテランが健在で、成長著しい中谷、2年目の大山らが去年通りの活躍をおさめてくれ、ここにロサリオの長打力が加われば、阪神打線は脅威だ。金本監督は就任当初から「大砲タイプの補強」を訴えてきた。それが叶ったのだから、「優勝」を口にする気持ちも分からなくはないが、冷静なチーム分析も始まった。金本監督は「いちばん大事なこと」を忘れているようだ。
ライバル球団のスコアラーがこう言う。「センターラインが定まっていない」。センターラインとは、守備の根幹である。捕手、セカンド、ショート、センター。優勝を狙うチームはこのセンターラインが固定され、息の合った守備・連携で攻撃のリズムも作っていく。しかし、阪神はそうではない。
「正捕手不在は相変わらず。今年も梅野、坂本らの競争になるのは必至で、一人に固定することができなければ、先発投手との相性で使い分けることになりそう」(前出・同)
セカンドは大山、センターは中谷を予定しているという。問題はショートのポジションだ。昨年のちょうど今頃、金本監督は若手の北條を固定するつもりでいたが、失敗した。期待の大きさがプレッシャーになったのか、打撃不振に陥り、二軍降格も経験した。その後は何人かの選手をテスト的にショートで使ったが、金本監督を納得させるレベルには至っていない。
「ひょっとしたら、ドラフト3位の熊谷(敬宥=22/立教大)が獲るかもしれない。自主トレで、高代コーチも認めていたし、往年の盗塁王・赤星憲広氏を彷彿させる脚力もある」(在阪記者)
センターの中谷も2年連続で活躍できるという保証はどこにもない。そう考えると、阪神はもっとも重要なセンターラインに“爆弾”を抱えた状況でペナントレースに臨むことになりそうだ。センターラインが日替わりとなれば、守備陣への不安が投手陣への重圧となり、余計な失点を増やしてしまうことにもなりかねない。
「金本監督は打撃力優先でレギュラーを決めていくタイプ。『少々の失点なら、打ち返して逆転する』の発想ですから」(前出・同)
全体ミーティング後、金本監督は報道陣の要請に応え、囲み会見にも臨んでいた。去年は「楽しみと不安が五分五分」と言っていたが、今年は「楽しみが7割」とチームを評していたが、残りの「3割」が何を指してのことなのかは語っていない。
万が一、ロサリオが日本の野球に適応できなかった場合、金本構想は完全に崩壊する。昨季、好機で選手が打てないと、金本監督は怒鳴り声こそ挙げなかったが、ベンチに「右ストレート」を食らわし、選手を震え上がらせていた。ロサリオが金本阪神の運命も握っているようだ。