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KNOCK OUT初代フライ級王者決定!小笠原瑛作熱望、Sバンタム級T来年開催

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石井一成、小笠原瑛作

キックスロード
「KING OF KNOCK OUT 2018」
▼9日 東京・両国国技館

 「KNOCK OUTの賞金はずっと貯めているので、車を買いたいですね」

 初代フライ級王者に輝いた“格闘技界のプリンス”石井一成は試合後、優勝賞金の使い道を聞かれると「それ、絶対に聞かれると思ったんですよ」と照れ笑いを浮かべながら話した。まさに「1秒も気を抜けなかった」闘いから解放され、20歳の素顔に戻った瞬間である。

 KNOCK OUTにはもともと軽量級・フライ級のベルトを作る構想はなかった。しかし、石井一成、能登龍也、タネ・ヨシホらの活躍により、小野寺力プロデューサーの考えが変わっていく。「フライ級の試合がここまで面白いというのは大きな収穫ですね」。大会総括会見で小野寺プロデューサーの口から「フライ級」という言葉が増えていったのだ。そして今年、石井の強い直訴もあって、6月の後楽園ホール大会から初代フライ級王座決定トーナメントの開催が決定。8人のフライ級戦士がKNOCK OUTのリングに集結した。

 決勝には、石井と大崎一貴が駒を進めた。石井は1回戦で昨年秋のRIZINで敗れている政所仁にリベンジを果たし、準決勝では仲山大雅の鼻をへし折った。一方、大崎は1回戦で能登を相手に、準決勝ではヨシホを相手に大激闘の上、それぞれKO勝ちを収めた。両者は過去に2度対戦し、いずれもドローに終わっているが、最後の対戦から4年の月日が経過。お互いに成長し、“別モノ”になっているはずだが、2人は準決勝後、口をそろえて「お互いの手の内は分かっている」とコメントしていた。

 そして、いざ決勝のゴングが鳴ると、2人は「分かっている」の言葉通り、1Rからお互いの攻撃をうまくかわしていく。2Rに一貴の左フックが石井を捉えて、2Rはジャッジ2名が一貴を優勢とした。石井は「ポイントは気にしてなかった」と話していたが、3Rから石井の猛攻が始まる。一貴も応戦するが、「一発ももらえない。一発もらったら二発返さなきゃいけないと思った」という石井の気持ちは最後まで切れなかった。結局、2-0の判定で石井が勝利。見事、初代フライ級王者に輝いた。悔し涙を浮かべながら退場する一貴に対して、両国国技館の観客からは大きな拍手が送られた。

 「フライ級って光が当たらない階級で、そのタイトルマッチを国技館のメインでやれたのは感慨深いですね」

 フライ級トーナメントの“言い出しっぺ”でもある石井にとって、フライ級が国技館のメインになったのは感無量だったようだ。「この半年間、長いようで短いような、いろんな思いがありました。1年前じゃ考えられない。でも僕が言いだしたことなんで、このベルトは僕のベルトです」ときっぱり。「でもここがスタート。アジアや世界に向けて僕がKNOCK OUTを引っ張っていきます」。石井は黒いベルトの“重み”を感じながら、来年の飛躍を誓った。

 小野寺プロデューサーは「今年やった那須川天心対スアキム以来の手に汗を握る試合だった。本当に涙が出るほど感動しました。フライ級にメインを託して良かった。石井くんと大崎(一貴)くんは“名勝負数え唄”のようなカードになるんじゃないですか。4度目はタイトル戦?十分に可能性はあります」と再戦の可能性も示唆した。

 石井も「このトーナメントに出た中で、もう一度やりたいのは大崎選手。もしフライ級もアジアトーナメントをやるのなら、日本代表として2人で出たい」と明言している。キック界では久々となる“名勝負数え唄”として、今後定期的に対戦することもあるかもしれない。この試合を見れば大半のファンは「また見たい」と思うはずだ。小さな2人の若者が国技館という大舞台で、2階スタンドの上まで届く試合を繰り広げ、メインにふさわしい内容で最後まで観客を熱狂させたのは、格闘技界にとっても明るい話題となった。

 この日はもうひとつ来年に向けて大きな動きがあった。1年前、勝利すれば那須川天心戦が確実視されながらも高橋亮とドローに終わった小笠原瑛作が再戦に臨んだ。1Rにダウンを奪われるも、スタミナを温存し、終盤にラッシュをかけて、判定で3-0の逆転勝ちを飾った。

 瑛作は「完勝じゃないけど、瑛ちゃんらしさが見せられたかな。勝てて良かった」と胸をなで下ろした。「1Rでダウンを奪われたときは去年(のこと)がよぎりました(笑)。でも2Rから諦めないで、コツコツ相手に当てられて良かった。もっと早い段階で倒そうと思ったんですけど、身長が高いのでプレッシャーがかけられなかった。試合の中でプランを変更して、ローを中心にしました。来年はKNOCK OUTでスーパーバンタム級のトーナメントをやってほしいですね」と熱望した。

 続けて瑛作は「天心はメイウェザー戦があったり、なかなかやるのは難しいかもしれないけど、僕は実現させたいと思っている」と天心戦に向けた気持ちがあることを示唆。そう言いつつも、KNOCK OUTでのベルト獲りに臨む意向を明らかにした。小野寺プロデューサーは、これを伝え聞くと待ってましたとばかりに「スーパーバンタムやります!」と、“前倒し”で宣言。「あの階級は激戦区。すごいトーナメントになると思う」と、4階級目のタイトル創設に自信を見せた。果たしてどんな選手が集まるのか。そして階級ごとに違うベルトの皮の色にも注目したい。

 KNOCK OUTは来年1月の渋谷、2月の大田区、4月に高田馬場、6月に横浜文体、8月に大田区でそれぞれ大会を開くことが決定している。

取材・文・写真 / どら増田

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