“日本最南端プロレス団体”琉球ドラゴンプロレスが本州にやってくる「なんくるないサーキット」の東京大会が、新木場で行われた。今年は3月にも開催されており、年2回の開催は今回が初めてとなる。
今大会の注目はメインのグルクンマスクVSウルトラソーキ。御万人王座「琉王」とHWCのW王者のグルクンマスクが、若手のホープ・ウルトラソーキ相手に2本のベルトを懸けて対戦。しかも沖縄以外でタイトルマッチが行われるのは今回が初の試みで、今大会は“琉ドラ”にとっても重要な大会との心意気を感じさせた。
アンダーカードから本州ではなかなか見られない、琉ドラ生え抜きのポークたま子と真栄田ミサキと2AWが対決する女子タッグマッチや、ハイビスカスみいとリッキー・フジのジェンダーフリーマッチ、琉ドラのヒール軍「MAD DOG CLUB」と、TORU、ヒージャー・キッドマン組の対戦など、どれも白熱したファイトの連続で目の肥えた東京のプロレスファンをうならせた。
そして注目のメインイベント、グルクンマスクVSウルトラソーキは、序盤120キロの体躯を誇るソーキの規格外のパワーでグルクンを押す展開に。エプロンからボディアタックを仕掛けるグルクンをキャッチし、担ぎ上げてから、変形の水車落としのような形で放り投げると、その後は腰に集中攻撃。短期決戦を仕掛けるようなソーキの猛攻を、グルクンマスクは場外へのムーンサルトからスワン式のドロップキックなど、得意の空中殺法で反撃する。
その後、ソーキも重いセントーン、対角線に振っての圧殺プレス、パウンスからWARスペシャルを繰り出し、グルクンもジャーマンスープレックス、ムーンサルトプレスで一進一退の攻防を見せ、観客も固唾をのんで見守る好試合となった。
勝負を分けたのはトップロープからのボディプレスを1回成功させたソーキが、2回目を狙ったところ。ここでグルクンに捕らえられ、変形のパイルドライバーからラリアット、ハイキック、垂直落下式ブレインバスターで畳み掛けられた。最後はグルクンが渾身のファイヤーバードスプラッシュで勝負を決めた。
2冠を守り抜いたグルクンはソーキに対し「沖縄以外での初めてのタイトルマッチの相手がお前で心底良かった。よくここまで上がってきた」と称え、ソーキも「くじけずに頑張る。世界に通用する男になって、みんなを元気にする」と宣言。観客からも多くのエールが送られていた。
その後、グルクンから11月24日のビッグマッチ「琉球ドラゴンチャンプルー2019」(沖縄・ミュージックタウン音市場)のカード「ヒージャー・キッドマン&グルクンマスクVSウルトラソーキ&獣神サンダーライガー」が発表され、会場は歓喜に包まれた。
3月の東京興行でも、来年1月に引退する獣神サンダー・ライガーと「沖縄で対戦させる」と公言していたグルクンは見事、実現にこぎ着けた。「ライガーとウチナンチュが対等に戦って、これが琉球ドラゴンだというものをお見せしましょう」とファンに向け高らかに宣言した。
報道陣の前でグルクンはライガーと戦った2014年8月に「まだデビューしてなかった選手のソーキらが対等に試合できるように」と今回のカードの意義を説いた上で「沖縄の選手、ファンのみんなでありがとうと言いたい」と、沖縄ラストマッチとなるライガーに感謝の意を表せることに喜びを感じているようだった。
「いつかは後楽園ホールで単独でやりたい」グルクンマスクは今後の夢を語った。ジュニアヘビーの垣根を越えて躍動した「世界の獣神」の魂を受け継ぎ、琉球ドラゴンプロレスは夢を追い続ける。
取材・文・写真/萩原孝弘