410kg台の体はまったく見栄えがしない。ケイコを走らせれば併走馬に楽々とアオられる。だが、その地味なシルエットに秘められたエリモプリンセスのポテンシャルは相当高い。
佐々木晶師は笑いながら、こう切り出した。
「なにしろ非力だからね。チップの追い切りだと下が重くて止まってしまう」。ケイコがこれだから、当然ながらデビュー戦も不安がいっぱい。しかし、そんな思いは見事に裏切られた。
「いやあ、強かった。実戦では本当にいい走りをする。好スタートから2番手に控え、そこから抜け出して突き放す。すごい瞬発力だったでしょう。横綱相撲といえる勝ち方だったんじゃないかな」
軽い芝ならそのスピードとセンスを存分に発揮できる。父は初年度から好発進を決めたキングカメハメハ。NHKマイルCといい、ダービーといい、勝つときは徹頭徹尾、強さを誇示した。プリンセスの走りもいかにも父譲りのそれだった。
ただ、今回は重賞。相手はグンと強化されている。なかでも、師はツルマルジャパンを「あの馬は強い」と一目置いている。マリーゴールド賞でバンガロールをぶつけて敗れただけに、ジャパンの速さは身にしみている。
だが、それでも「プリンセスには意外性がある。体も細くならず維持できているし、瞬発力を生かせる流れになれば一発あっても…」
2開催使い込まれた小倉の馬場は明らかに差しが有利だ。良馬場で先行争いが激しくなれば、浮上の余地は十分残されている。
【最終追いVTR】終い重点の調整でゴール前だけ気合を付けられ、坂路800m56秒3→40秒8→12秒7をマーク。併走馬を半馬身差引き離してフィニッシュした。ケイコで走らないタイプだけに、これだけ動けば十分だ。