痛みも和らぎ、あとは実戦投球だけ。そんな前向きな状態だったが、登板が予定されていた5月28、29日の巨人二軍戦が雨天中止に…。復帰・調整メニューは足踏み状態となった。斎藤は雨天中止のモヤモヤを払拭するように、ブルペンで120球以上の投球を行っている。これだけ投げ込んで「違和感ナシ」だから、左脇腹痛は完治したと見ていいだろう。その『左脇腹』の故障について、プロ野球関係者の間ではこんな議論も巻き起こっていた。何故、左脇腹を故障したのか−−。
近年、左脇腹痛で戦線を離脱した投手に、ドジャースの黒田博樹もいる。投手出身のプロ野球解説者によれば、右腕の振りの強さ、鋭さに、他の筋肉部位が“悲鳴を上げた”結果であって、往年の江川卓投手も同様の故障を経験しているという。故障を肯定しているわけではないが、脇腹痛は「一流投手の証」とも認識されているそうだ。
しかし、斎藤については否定的な見解も聞かれた。
「ピッチングフォームを崩している点については、大学時代から指摘されてきました。ピッチングフォームの悪癖による怪我ではないでしょうか」(在阪球団関係者)
一般論として、投手の故障個所は肩、肘が多い。とくに連投を強いられる救援投手がそうだが、登板過多(勤続疲労)がその原因となっている。『故障』を学生野球レベルで語るとすれば、その原因の多くは「投球フォームの悪癖」だという。
斎藤の場合は、やはり投球フォームの乱れによるものではないだろうか。左脇腹の故障が発覚したとき、斎藤は「初めて」と話していた。ストレートの球速を高めるため、「意図的に現在の投球フォームに崩した」とも聞いているが、そうした『無理』が蓄積されての故障だったと思われる。
「應武篤良・早大監督(当時)も再三、注意していました。でも、斎藤はガンコなところもあって、投球フォームをもとに戻しませんでした」
早稲田大学時代を知る関係者がそう証言する。
日本ハムから指名された直後、「斎藤の投球フォームをどう修正していくか」も、スター育成の重要なテーマとされていた。春季キャンプを観たプロ野球解説者たちも「あの投球フォームは…」とこぼしていたが、それはテレビカメラがまわっていないことを確認してからの発言だった。『斎藤批判』はTV局側が“自主規制”していたせいもあるが、梨田監督、吉井投手コーチの「投球フォーム改造は次のステップ」とする教育方針に配慮してのことだった。
「今の投球フォームが斎藤に適している、という声もないわけではないんです。あの投げ肩で実際に結果を出しているわけですから。低めに変化球を集め、打ち損じを誘う今の投球スタイルでいいのか、ストレートにキレが生じるような下半身主導の投球フォームに代えるのか…。日本ハム首脳陣は斎藤本人に決めさせようとしているのでは」(プロ野球解説者の1人)
一流選手の調整、感覚(感性)は一流選手にしか分からないと言う。その意味では、今回のリハビリと調整方法は『一流』だった。「完治は交流戦明け」と目されていた怪我を短期間で治してみせた。短期間で完治できたのは自分自身を客観視できるからで、それこそ、一流選手になれる資質である。
「ドラフト直後からずっと、カメラに追い回されていたので、今回の怪我は精神面でもリフレッシュできたはず」(関係者)
斎藤に足りないもの。それは、自分自身の投球スタイルを見つめ直す時間ではないだろうか。