8000万円の現金や、宮古島の土地購入費用、それに知人に買わせた久喜市内の土地と犯行に使われた車の購入費(約200万円)など、すべてが自前なのか他人から調達したものなのかという確認は取れていないが、少なくとも犯行に関わるだけのカネを用意していたのは事実だ。
一方、年収5億円の時代もあったとされる霜見さんは、巷間言われるほどのセレブではない。
日本に帰国し、1カ月ほどの予定で滞在していた東京・銀座のマンションは賃貸だし、霜見さんの元上司が言うには、都内の高級マンションは外国人の代理人として名義を貸しているにすぎない。
「バブルで沸いたドバイの土地や株を巡る投資話に関与し、'11年4月には投資家から3300万円の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こされるなどトラブルを抱えており、1月25日にはこの訴訟に関して、霜見さんの尋問が行われる予定だった。芸能界や政界などに人脈を持つ反面、博打好きな個人投資家が群がるリスキーな“ボロ株”企業群にも深く関わっていた。だから霜見さんから派生する人脈をたどると、いわくつきのIT長者や仕手筋がフルキャストで登場する。さらには、さる広域暴力団の金庫番といわれる人物が霜見さんに損をさせられたとか、件の訴訟では、その広域暴力団傘下団体のフロントといわれる人物と一緒にドバイへの投資案件を持ち歩き、この人物もドバイで霜見さんから一杯食わされているとか、実におっかない連中が彼の周辺に蠢いているんだ」(都内の投資顧問業者)
この事件は、「金融庁などからも“資本のハイエナ”と目を付けられているジャスダック上場の会社周辺にある」と指摘する霜見さん関係者も複数存在する。
また、渡辺容疑者の過去もベールに包まれている。30代前半に日鯨を起業するまでは、板前やフグ仲卸業社の社員など飲食関係の職を転々としていた。しかし、一部では日鯨の出資者には、さる広域暴力団のフロントや、いわゆる共生者がいたともいわれる。
先の投資顧問業者も、「この事件の捜査は、山に入って魚を獲ろうとしているようなものなのではないか」と、こう疑問を投げかける。
「逮捕されてすぐ『自分一人でやった』とゲロしたり、誘い出してすぐに殺害するなど、手口があまりにも“ヒットマン”的だ。渡辺は誰かの指示、または見えない意向で動いたのではないか。捜査1課より組対3、4課の協力を仰いだ方がいいんじゃないか」
果たしてこの事件に、黒幕はいるのか−−。捜査の一層の進展が待たれる。