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2011年夏の甲子園(決勝前夜1) ビッグイニングの続出「野球は冬のスポーツ?」

 3、4点はセーフティ・リードではない!? 高校野球とは打撃戦である…。今夏の甲子園大会で改めてそんな印象を強めた。その最たる例が大会10日目の3回戦(4試合)だろう。『智弁学園(奈良)対横浜(神奈川)』の一戦は、スコア「4対1」で迎えた9回表、打者13人7長短打で一挙8点を挙げ、大逆転。『新湊(富山)対東洋大姫路(兵庫)』戦も、「2対1」の投手戦が8回裏に崩れ、東洋大姫路が「9得点のビッグイニング」を作った。1日でビッグイニングの攻撃を2試合も観られるとは−−。

<新湊「魔の8回」9失点>
<横浜9回「最善」の継投も実らず…>

 翌朝の新聞はそんな見出しを踊らせていた。
 関東圏の私立高校監督がこう言う。
 「どのチームも冬場には相当量のスイングをさせているからね。それに加えて、金属バットの威力でしょ? まあ、(バットの)芯に当たらなくても長打になる是非は、今に始まった話ではないけど」

 しかし、高校野球の練習風景を取材すると、公立、私立のどちらの監督も「ウチは守備のチーム」と返す。
 『守備』といえば、大会12日目(17日)の『光星学院(青森)対東洋大姫路(兵庫)』が興味深い。光星学院の勝因は「守備・組織力」である。
 光星学院のエース・秋田教良君は1回裏無死一、二塁の場面で、次打者の送りバントを読み切り、二塁走者を三塁で刺してみせた。2回裏も一死二、三塁の窮地で捕手・松本憲信君が小飛球となったスクイズを俊敏な出足で捕球し、併殺に仕留めている。5回も一死一、三塁の場面で「4-6-3」の併殺。『高い守備力』で随所に見られた。
 だが、同校の地方大会のデータを見直してみると、青森県大会は「打撃戦で征した」と言わざるを得ない。1回戦「10-0」(6回コールド)、2回戦「8-1」(7回コールド)、3回戦「13-0」(5回コールド)、4回戦「15-10」、準決勝「10-0」(6回コールド)、決勝戦「9-1」。地方大会とはいえ、チーム打率4割1分5厘。試合日程の組合せ抽選前、「もっとも対戦したくない相手」「ある程度の失点は覚悟しなければ」と、同校の打撃力を警戒していたのも思い出した。
 東洋大姫路との試合を見れば分かる通り、併殺プレーの確実性、瞬時の判断能力の高さ、野球カンは、相当量の守備練習を積んでいなければできない芸当である。
 甲子園のスタンドも唸らせた同校の攻守に渡るレベルの高さは、何処から生まれたのか−−。個人的には『冬場の練習環境』にあると思っている。

 駒大苫小牧高校が全国制覇に成功したころ、北海道の有名校、及び札幌近郊の中学・硬式クラブチームの冬場の練習を取材できた。積雪でグラウンドが使えないため、メイン練習場は『室内施設』となるが、そのなかで捕球姿勢やティー打撃に相当量の時間を割いていた。言い換えれば、『基礎練習』に時間を割くのである。室内練習場だから十分な広さはないが、その狭さを逆に利用しているようにも見えた。この10年間で、北海道、東北地区の『室内施設』の確保・整備も進み、全国大会における地域格差も解消された。
 光星学院の打線の破壊力、守備の緻密さも、冬場の基礎練習によるものだろう。
 07年から3季に渡って、何人かのライターとチームを組み、『公開!甲子園名門野球部のトレーニング』なるムック本をまとめた(宝島刊)。その際、何人もの監督さんたちが口にしていたのが、「冬場のトレーニングの重要性」である。

 甲子園は私立一辺倒の時代も長かった。近年、どの高校が優勝するのか、本当に予想が付かなくなった。それは『特待生制度の改定』よりも、「地域格差の解消」が大きい。また、「地域格差の解消」なる言葉の裏には「冬場のトレーニングをいかに充実させるか」という指導者たちの熱意も隠されている。(スポーツライター・美山和也)

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