−−そもそも、なぜ芸人さんになったんですか?
「ラーメンズさんが“オンバト”(NHK『爆笑オンエアバトル』)に出てるのを観て、ひとりでシュールなコントをやりだして、小林賢太郎さんみたいになるんだ! って思ったんですけど、当然なれないわけで…。なれないと気づいてから、自我を削っていって、じゃあ、人に負けないものはなんだろうと思ったとき、自分にあるものは歌、ギター、昭和っぽい顔(笑)。この手元にあるもので、いったら、冷蔵庫に残ったもので何かを作ろうという感じだったんですね」
−−歌には、自信があったんですか?
「たまたまなんです。高校は栃木高等学校っていう、県内で2番目にいい進学校に行ったんですけど、周囲が優秀すぎて、付いていけなくなったんです。それで、勉強しなきゃ! と思って、周りとの社交を絶って、学校と家の往復。友だちもいなくて、楽しいことは“オンバト”を観るだけ。カラオケにも、行ったこともなかったんです。で、大学に行って、4月の親睦会みたいなときにカラオケに行ったら、“見直したよ”って言われたんですね。きっと、見下されてたんでしょうね。その言葉がすごく心に残って。さっきの“冷蔵庫の何か”だったんですよ、歌が。ギターは独学なんで、ほんとはヘタなんで、自分のネタか、好きなゆずしか弾けない」
−−そのスタイルや芸に関して、たとえば事務所の先輩のシティボーイズ・大竹まことさんに相談したり、しますか?
「去年の末、自分がどうしたらいいのかわからなかったんで、『大竹まこと ゴールデンラジオ』をやってる文化放送に行って、“ヒントをください!”って言いましたね。喫煙室があるんですけど、そこに付いていって。大竹さんって、ずっとコントを作り続けて、おもしろいことを考え続けてる人だから、言ってることが抽象的すぎて、むずかしいんですよ、“想像の翼を広げなさい”とか、“おまえはまだ地面を歩いてる。地面がないところを歩きなさい”とか。哲学的すぎて、8割わかってないんですけど(笑)、わかった2割を大事にしていると、自分のなかのレジェンドからの言葉なので、スピリチュアル的に感じてきたというか。迷ったら文化放送に行くっていうのは、今でも2週間に1回とか、しています」
−−気持ちがラクになれました?
「今の事務所の所属になったのは、ちょうど1年前なんですけど、別の事務所にいたら感じられない引け目と負い目を、つねに感じていますね。ASH&Dは所属芸人の数が少ないながらも、ザ・ギースさん、ラブレターズさんは賞レースで結果を残して、阿佐ヶ谷姉妹さんはテレビに出ている。僕だけ結果を出していないから、高校のときみたいにひとり黙々と…ってなってしまうと、ヤバイ、このままじゃ崩れる!って思って、そんなとき、文化放送に行くんです」
−−今年こそは、存在感を見せたい?
「とりあえず、“R-1”決勝ですね。僕以外、みんなおもしろいですけど、悩みながらもモチベーションだけは高く持って」
【プロフィール】'86年7月生まれ、栃木県出身。2011年デビュー。アッシュ・アンド・ディ・コーポレーション所属。
(次回は16年3月最終週に更新)